このテキストは、令和4年度心のバリアフリー推進員研修及び障害者理解のための所属内研修における講義資料として作成したものです。 研修資料のページ数は、表紙を含めて全部で15ページ、資料表紙以降の文字数は約2,700字あります。 1ページ 表紙 令和4年度心のバリアフリー推進員研修・障害者理解のための所属内研修 研修タイトル「共生社会の実現に向けて」 令和4年12月 埼玉県教育局教育総務部総務課・県立学校部県立学校人事課 2ページ 目次 1はじめに 3ページ 2共生社会とは 4ページ 3心のバリアフリーとは 5ページ 4あなたの職場にはどんな「困りごと」があるでしょうか? 6ページ 5心のバリアを取り除くと・・・ 10ページ 6心のバリアに気づく 13ページ 7チームとして協力していきましょう 14ページ 参考 15ページ 3ページ はじめに 障害者が働きやすい職場づくりを進めていくためには、施設や設備の整備だけではなく、人々の多様な在り方を相互に認め合い、その上で適切な支援を行っていくことが重要です。 また、それぞれの立場に応じて役割を分担し、チームとして協力していくことが不可欠です。 本研修では、一人ひとりの教職員が無意識に持つ「心のバリア」に気付き、障害のある人を取り巻く環境について考えることで、障害の有無に関わらず「すべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うこと」について学んでいきます。 そして、職場にいる障害のある職員本人をよく知り、理解することで、適切な支援に結び付けていただきたいと思います。 教育総務部総務課・県立学校部県立学校人事課 4ページ 共生社会とは 共生社会とは、障害の有無や年齢、性別、文化の違い等にかかわらず、全ての人が相互に人格と個性を尊重する社会のことです。 障害者基本法には、この「共生社会」を実現するため、国や地方が責任を持って取り組むことや、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することなどが定められています。 共生社会を実現するためには、希望や能力に応じ、障害のある人もない人も職業を通じて社会参加できるよう、環境を整えることが必要です。 ここでいう環境とは、施設設備や専門的な支援のことだけではなく、全ての人が「職場に障害者がいる」ことや、「障害に配慮する」ことはごく普通のことだ、という認識を持つことが大切です。 障害の特性を知り、障害のある人への理解を深め、差別や偏見といった「心のバリア」を取り除き、 相互に人格と個性を尊重し合うことが求められています。 5ページ 心のバリアフリーとは 国の「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(2017年関係閣僚会議決定)では、「心のバリアフリー」を以下のように定義しています。 ・障害のある人への社会的障壁(困りごと)を取り除くのは社会の責務である、という障害の社会モデルを理解すること ・障害のある人への差別を行わないよう徹底すること ・自分とは異なる条件を持っている方とのコミュニケーションをとる力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し、共感する力を培うこと です。 以下、障害の「医学モデル」と「社会モデル」の説明です。 車いすを使用している女性がカーショップに行こうしている場合の例です。 狭い入口、階段、急な坂道、案内がない、などの困りごとがあります。 「障害の医学モデル」では、障害は障害のある方の中にあって、リハビリなどをして社会に適応できるよう、「障害者本人が乗り越えなければならない」と考えます。 一方、「障害の社会モデル」では、障害は社会の中にあって、これを取り除くことが必要であり、困りごとを取り除いていくことが社会の責務である、と考えます。なぜ困りごとがあるのかを考えるとき、バリアは社会の中にあり、これを取り除くことがバリアをなくすことであると捉えることが重要です。 6ページ あなたに職場にはどんな「困りごと」があるでしょうか? 職場環境も、多数派、つまり障害のない人に合わせた環境になりがちです。 気づかない内に障害のある人にとっての「困りごと」が生じていませんか? 3つのケースを見ていきましょう。あなたの職場はどうですか? ケース1 職員A「うちの職場に車いすを使う方が採用されるようです」 職員B「この建物にはスロープもエレベーターもあるから大丈夫ですね」 ※イメージ:車いすの人がスロープを使用している。 7ページ ケース2 職員C「聴覚障害のある教職員が着任するそうです。分掌はどうしましょうか。」 職員D「障害者だからといって、特別扱いは良くないですよね。」 ※イメージ:一人で授業も採点も行っている。 8ページ ケース3 職員E「障害のある職員が、周囲から孤立してしまっているようです。」 職員F「それはいけませんね。コミュニケーションをとるよう本人に話しておきます」 ※イメージ:話しかけられた障害のある職員が困っている。 9ページ あなたに心のバリアはありますか? ケース1からケース3について、感じたことを書いてみましょう。 <3つのケースについての記入スペース> 10ページ 心のバリアを取り除くと・・・ 先ほどの3つのケースについて、もう一度考えていきましょう。 ケース1の受け答えは、このように行うと良いでしょう。 職員A「うちの職場に障害者の方が採用されるようです。」 職員B「どういった配慮が必要か、職場環境を見直し、本人にも確認しましょう。」 車いすでの困りごとの例 o 混雑したところでは動きにくい o 入口や通路が狭いと通れない o ドアを開きながら車いす操作は難しい o 階段や段差は移動が困難 o 雨や雪の日は外出が困難(傘を使う、雪上走行などは難しい) o 地面に近いので特に夏は暑い o 使えるトイレが限られる o 床に落としたものが拾えない人もいる o 高いところに手が届かない ポイント 【コミュニケーションのポイント(身体障害・車いす利用のケース)】 ・自力で行動できる人もいるのでその場合は見守る ・困っていたら声をかける 「お手伝いすることはありますか」「何か私にできることはありますか」 ・車いすを動かしたり持ち上げたりするのは危険を伴うことがあるので、絶対に無理をしない ・会話をする場合は目線を合わせた方が気持ちが伝わりやすい   【合理的配慮のポイント(身体障害・車いす利用) 】 ・ オフィスの中や周辺を移動しやすいように配慮する。(通路の最低幅は80cmを確保する) ・作業机や自動販売機などは、車いすに座った状態でも利用できる高さや対応しているものにする 同じ障害であっても配慮事項はひとり一人違います。どういった配慮が必要なのかを、障害者本人から聞き取りましょう。 11ページ ケース2では、このように受け答えできると良いでしょう。 男性職員「聴覚障害のある教職員が着任するそうです。」 女性職員「どんなサポートをしたら力を十分に発揮出来るのか、一緒に考えましょう。」 聴覚障害のある人の困りごとの例 ・聞こえない障害があることを外見からは気づいてもらいにくい ・後ろから声かけされても気づかないため「無視をした」と誤解される ・手話でしか会話できないと勘違いされ、手話がわからないという理由でコミュニケーションをとってもらえない ・音声言語がうまくできないと知的障害があると思われる ・緊急情報が音声だけだと伝わらない ・情報がリアルタイムに伝わらない コミュニケーションのポイント(聴覚障害のケース) o コミュニケーション方法は本人と相談して、口話、手話、筆談、インスタントメッセージなどお互いにやりやすい方法を見つける o 予定、金額など重要な事項は筆談を利用する o お互いに理解できたか確認しながらコミュニケーションをとる o 打ち合わせでは話者が手を挙げるなどして知らせ、同時に二人以上の人が話さないように する o 周囲の雑談のような会話も必要な情報なので、疎外感を与えないように伝える 教職員は、自分で一通りの仕事が全部できないといけないと思い込む人がいますが、その必要はありません。合理的な配慮は特別扱いではなく、当たり前のことです。どのようなサポートがあれば出来るのかを、障害者本人を含めて考えていきましょう。 12ページ ケース3の受け答えは、このように行うと良いでしょう。 女性職員「障害のある職員が、周囲から孤立してしまっているようです」 男性職員「話を聞いてみますね!悩みがあるのかもしれませんし、今は一人で落ち着ける環境が必要かもしれません。」 精神障害のある人の困りごとの例 ・外見からわかりにくいので精神の病気を理解してもらえない ・新しい環境や経験等のストレスに弱い ・疲れやすい ・幻覚や幻聴がある人もいる ・薬や病気の影響で行動や思考に時間がかかる人がいる ・病気のつらさをわかってもらえない ・薬の影響を理解してもらえず、怠けていると思われる コミュニケーションのポイント(精神障害のケース) o 閉じこもっている場合、無理に外に出すことは避ける o 自分の言いたいことがうまく話せなかったり、話にまとまりがなくなったり、会話が止まったりしても、無理に聞き出すことは避ける o 様々な事象を被害的に捉えやすい場合もあるので、安易に考えを否定しない o 集団になじめない場合は、落ち着ける環境を用意する o 日によって心身の調子が大きく変わる場合があるので、先入観を持たず、必要に応じて本人にその日の調子を確認する なぜ周囲から孤立してしまっているのか、様々な要因の可能性があります。障害の特性が関係している場合も、そうでない場合もあるでしょう。 もし、障害の特性が関係している場合で、特に、精神障害のある人の場合は、その人ごとに「落ち着ける環境」が大きく異なります。 無理に本人を変えさせようとするのではなく、本人の目線でどんな困りごとがあるのかをしっかり把握し、合理的な配慮を行う必要があります。 適切な配慮を行うためにも、日頃からのコミュニケーションが大切です。 13ページ 心のバリアに気づく 「心のバリアフリー」の第一歩は、誰もの心の中にある心のバリアに『気づく』ことです。「心のバリア」とは、固定観念や、自分と異なる特性を持った人がいることに想像力が働かなかったり、そうした人たちは特殊な存在だと思い込んだりすることです。 障害のある人の困りごとは、心身の機能に障害があるから起こっていると思われがちですが、これも固定観念です。 障害のある人は、段差や狭い入口のように、障害のない人の都合や便利さに合わせて作られた環境や仕組み(=社会が作ったバリア)によって困りごとを多く経験しています。 社会にある「障害=バリア」を取り除いていくには、障害のある人が社会的障壁によって、どんな困りごとや痛みがあるのかに『気づく』こと、そして、障害のある人とのコミュニケーションを積極的に行って、何が必要なのかを理解することが重要です 気付きの例 ・口頭での指示が伝わりにくいのかな ・パソコンの入力が早いから、他の仕事もできるかな 14ページ チームとして協力していきましょう 障害の状況やそれによって感じる「バリア」は、一人ひとり違います。 障害のある人とその周囲の人がお互いに能力を発揮するためには、それぞれの特性を活かした働き方をすることと、お互いを認め合うことが大切です。 心のバリアを取り払い、お互いにコミュニケーションをとりながら、互いに理解を深め、チームとして協力していきましょう! チームの例 ・統括、相談担当の教職員 ・外部連携、相談担当の教職員 ・授業準備・支援担当の教職員 ・教材研究・支援担当の教職員 ・施設管理・事務担当の教職員 15ページ 関連法規 ・障害者基本法・障害者基本計画 ・障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 共生社会の実現に向けた基本的な理念や、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進について定められています。 (内閣府HP)https://www8.cao.go.jp/shougai/index.html ・障害者雇用促進法 「すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない。」(第5条)をはじめ、対象障害者の雇用義務(法定雇用率)、合理的配慮の提供義務、苦情処理紛争解決援助などが規定されてます。 (厚生労働省HP) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html 県教育委員会の取り組み ・埼玉県教育委員会障害者活躍推進計画 https://www.pref.saitama.lg.jp/e2201/syougaisya-keikaku202004.html ・障害者理解のための意識啓発等研修資料 https://www.pref.saitama.lg.jp/e2201/syougaisya-rikai-keihatsu.html 研修資料は以上です。