第2章 業務別の合理的配慮の主な具体例 業務別の合理的配慮の主な具体例は次のとおりです。 なお、ここに記載している具体例は過重な負担が生じないことを前提としていること、これらはあくまでも例示であり、記載している具体例だけに限られるものではないことに留意する必要があります。 また、個々の合理的配慮の提供の前提として、「障害者に対する思いやりを持って接する」ことに留意する必要があります。 ○命令口調をしない。 ○急かさずにゆっくり話す。必要な場合は繰り返す。 ○介助者や通訳者ではなく相談している本人の方を向いて話す。(初めからコミュニケーションが取れないと決めてかからない。)【重要】 また、接する相手の障害特性を理解し、適切な対応を選択する必要があります。 (詳細は「第3章 障害特性及び配慮すべき事項」を参照してください。) また、職員一人で対応することが難しい場合、必要に応じて他の職員の応援を求めるなど、柔軟な対応が望まれます。 庁舎案内・誘導 ○車いす使用者にとって車いすは身体の一部のような存在のため、車いす使用者であるからと本人の了解を得ずに突然押したりせず、本人の希望を必ず確認した上で誘導介助を行う。 ○庁舎内で車いすや杖などを利用する障害者が段差などのある箇所を通行する際に、キャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。 ○特に視覚障害者は、誘導介助を希望されていても周りの人が職員か一般来庁者かが分からず自ら意思表明することが難しいため、白杖を使用していたり、周りに助けを求めているような様子が見受けられた場合は積極的に声掛けする。  また、その場合は、まず自分の肩書及び氏名を明らかにする。 ○目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いて対応する。 窓口対応 ○窓口において障害者を含む不特定多数の方へ同じ説明を行うものがある場合、あらかじめ説明内容を記載した資料を作成する。  また、可能な限りルビを振ったもの及び点字版なども併せて作成する。 ○車いす使用者のため、書類が記入しやすい高さのテーブル等を用意する。(望ましい高さの目安は70〜75p程度) ○障害者対応用の備品・消耗品(例:ルーペ(拡大鏡)など)について整備する。 ○少しお待ちいただく場合、「少しお待ちください」と声を掛けるのみではなく、その場で待つべきなのか、窓口を離れて待合席等で待つべきなのかを含めて案内する。  また、およその待ち時間の目安も併せて案内する。特に視覚障害者の場合、自分の前に何人待っているかが分からないため、順番も含めて案内する。 ○呼び出しの音声が聴こえない人には、どのような方法でお知らせするのかをあらかじめ説明する。 ○順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。 ○立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。  ○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により発作等がある場合、当事者及び周囲の者の理解を得た上で、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。 ○疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申し出があった際、別室の確保が困難な場合は、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 ○資料に基づき説明する場合は、一通り全て読むのではなく、ある程度短く区切って、その都度、内容について質問ができるような形にする。  特に視覚障害者用の点字資料については、点字資料はそれほど速く読めないことに留意し、一行ずつ、ゆっくり説明する。 ○障害者から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。  また、なじみのない外来語は避ける。  漢数字は用いない。  時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記する。  これらに配慮したメモを必要に応じて適時に渡す。 ○聴覚障害者に対しては、筆談・読み上げ・手話・コミュニケーションボードなど、視覚障害者に対しては、点字・拡大文字・拡大鏡など、複数のコミュニケーション手段を用い、最も意思疎通が取れると思われる方法を選択する。 (例えば聴覚障害者の場合、全ての聴覚障害者が筆談ができるとは限らず、筆談が必ずしもベストの方法とは限らないことに留意する。) ○意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード、写真等の活用、または絵を書くなどして意思を確認する。 ○比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。 ○不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供する。 ○書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達する。  申し出がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。 ○定型の申請用紙等の場合、視覚障害者に対しては、自筆が可能な方であっても、記入する位置や必要な文字の大きさが分からないため、署名欄と同じ大きさの部分だけを切り取った枠(サインガイド)などを用意する。 発行物の作成、送付(通知、リーフレット等) ○通知、リーフレット等に記載する問い合わせ先は、「電話」「FAX番号」の他、「メールアドレス」を併記する。 ○会議等の通知で、初めから送り先が視覚障害者であることが分かっている場合、相手の了解を得た上で、紙による通知の他、電子メールによる通知などを併用する。  (音声読み上げソフトが利用できるため。)  なお、その場合、電子ファイルの添付よりも可能な限りメール本文への直接入力が望ましい。 ○印刷物に複数の色を使う場合は、色覚障害者が見分けやすいように配慮する。  見分けやすい配色の例  紺と黄、白と緑、など  見分けにくい配色の例  赤と緑、白と黄、など ○拡大文字を使用する場合、22ポイント程度を標準とする。 ○リーフレット、冊子等については、可能な限りルビを振ったもの及び点字版なども併せて作成する。  また、必要に応じ、音声コードを貼付する。  特に周知の主たる対象に障害者が含まれる場合は留意する。 (対象が県民全ての場合、一定数の障害者が含まれることに留意してください。) 【音声コード】とは 紙面に印刷された印刷情報をデジタル情報に変換した二次元コードで、専用の読み上げ装置で記録されている情報を音声で読み取ることができます。 なお、印刷物に貼付する場合は、コードの位置認識のために切り込みを入れます。 ○施設紹介用DVD等を作成する場合は、字幕または手話通訳付きのものを作成する。  ホームページの作成 ○ホームページに掲載する問い合わせ先は、「電話」、「FAX番号」の他、「メールアドレス」を併記する。 ○PDFファイルの資料を掲載する場合は、テキスト版またはワード版も併せて掲載する。(テキスト版がより望ましい。) ○写真、図、グラフなどを使用する場合、それが何を示すものであるのか、文章による説明を併用する。 ○ホームページ作成の際には、CMS(埼玉県コンテンツ管理システム)のアクセスビリティチェックを必ず確認し、必要に応じ修正する。 執務環境整理、庁舎管理 ○通路に物を置かない。特に点字ブロックなど障害者誘導用の設備に注意する。 ○配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。  または位置を下げる。 ○障害者用の駐車スペースに健常者が駐車しないようチェックする。 ○障害者用の駐車スペース以外であっても、公用車が施設入口近くに駐車され来庁者が遠くに駐車せざるを得ないようなことのないようチェックし、必要に応じ公用車を移動させる。 ○駐車場などで経路の説明が複雑な場合は案内図を作成し渡す。 会議、説明会の開催 ○会場はエレベーター、多目的トイレ、障害者用駐車場等が整備されている施設から選択するように努める。  また、実際に施設を下見し、施設入口から車いす使用者や視覚障害者等が会場まで通行可能かを確認する。  通路幅の目安は幅120p以上とする。 (例:施設にエレベーターがあるとされていても施設入口は階段になっている場合等があります。また、エレベーターが小型で車いす使用者が利用できない場合等があります。) ○参加申込を受ける場合には、電話、FAX、郵送、電子メールなど複数の手段を用意する。 ○参加申込を受ける場合には、当日配慮を求める事項について可能な限り事前の把握に努める。  申し出があった場合には、内容に応じて手話通訳、要約筆記、磁気ループ、点字資料、車いす使用者専用の席、障害者用駐車スペースなどを手配する。 ○障害者の来庁が多数見込まれる場合、通常の障害者専用駐車場の他に、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画として確保する。 ○障害者の来庁が多数見込まれる場合、プログラムに休憩の回数を増やしたり、個別に質問を受ける時間を設ける。 ○入口から会場(トイレ等を含む)までの誘導案内(説明や矢印など)は、障害者が自分の判断で到着することができることを念頭に配置する。 ○障害者に講演等を依頼する場合、事前に来場時間を確認するとともに、入口付近で待ち合わせの上、会場まで誘導する。 ○スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、それぞれの障害に合わせ、近い席を確保する。 ○障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。 ○障害によっては体温調節が難しい場合があるため、設定温度に注意する。 ○電源コードの敷設により床面に凹凸ができる場合は、テープなどで被覆し、サインの設置や係員の配置により注意を促すなどの対応を行う。 ○会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。 ○視覚障害者に対しては、スクリーン等を使用して説明する場合、「この図を御覧ください。」という説明では分からないため、それが何の図で、どのような内容であるかを併せて説明する。 ○視覚障害者は、ホール等の広い会場では「部屋の外」に出るのが困難なため、本人の希望を確認した上で誘導介助する。場合によっては必要に応じ建物の外まで誘導介助する。 ○非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 ○会議等に手話通訳者等を手配する場合、あるいは介助者を伴うことがあらかじめ判明している場合は、資料はそれらの方々の分も用意する。 委託契約等の締結 ○一般競争入札、指名競争入札等の参加要件に、障害者差別解消法及び職員対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努める。 ○委託契約等を締結する際に、その内容に障害者差別解消法及び職員対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努める。 (具体的には、契約書又は仕様書等に次のような条文を盛り込むことが望まれます。) (不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供) 第○条 乙は、この契約の履行に当たり、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第八条第一項の規定に基づき、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 乙は、この契約の履行に当たり、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第八条第二項の規定に基づき、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 3 前項の合理的な配慮の提供に当たっては、(※各府省庁所管分野における民間 事業者向けの対応指針)及び埼玉県の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」を熟知するとともに、その考え方に基づくように努めなければならない。 ※各府省庁及び事業分野ごとに名称が異なるため、確認の上、正式名称に修正してください。 ○契約先に対して、各府省庁所管分野における民間事業者向けの対応指針、本県の職員対応要領及び当マニュアルを提供するとともに、その考え方等をよく説明し、熟知させる。