第3章 障害特性及び配慮すべき事項 障害者と接する際には、それぞれの障害特性を十分に理解する必要があるとともに、それに応じた適切な対応が求められます。 ここでは代表的な障害特性と対応時に配慮すべき事項について紹介します。 ※全体像をイメージいただくため、「主な対応」の一部には、「合理的配慮」の一歩先の「環境整備」に該当するもの(=過重な負担が生じるなど、努力目標として捉えるべきもの。例:施設の改修や備品の購入に関すること等)が含まれます。 視覚障害(視力障害・視野障害・色覚障害・光覚障害) 主な特性 ○先天性の場合もありますが、最近は糖尿病性網膜症などで受障される人も多く、高齢者では、緑内障や黄斑部変性症が多くみられます。 【視力障害】 ○視覚的な情報を全く得られない又はほとんど得られない人と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる人に大きく分けられます。 (全盲、弱視といわれることもあります。) ※視力をほとんど活用できない人の場合、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握しています。。 ※文字の読みとりは、点字に加えて最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンで行うこともあります。 (点字の読み書きができる人ばかりではありません。) ※視力をある程度活用できる人の場合は、補助具を使用したり文字を拡大したり近づいて見るなどの様々な工夫をして情報を得ています。 【視野障害】 目を動かさないで見ることのできる範囲が狭くなります。 @「求心性視野狭窄」:部分が中心だけになって段々と周囲が見えなくなります。  遠くは見えますが足元が見えず、つまづきやすくなります。 A「中心暗転」:周囲はぼんやり見えますが真ん中が見えません。  文字等、見ようとする部分が見えなくなります。 【色覚障害】 ○色を感じる眼の機能が障害により分かりづらくなる状態 (色が全然分からないというよりは、一定の色が分かりづらい人が多くみられます。) 【光覚障害】 ○光を感じその強さを区別する機能が、障害により調整できなくなる状態暗順応(明→暗で目が慣れてくること)や、明順応(暗→明で目が慣れてくること)が上手くできません。 主な対応 ○音声や点字表示など、視覚情報を代替する配慮が必要です。 ○中途受障の人では白杖を用いた歩行や点字の触読が困難な人も多いため留意が必要です。 ○声をかける時には前から近づき「●●さん、こんにちは。▲▲です。」など自ら名乗る必要があります。 ○説明する時には「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「●●くらいの大きさ」などと具体的に説明する必要があります。 ○普段から通路(点字ブロックの上など)に通行の妨げになるものを置かない、日頃視覚障害者が使用している施設内のものの位置を変えないなど周囲の協力が不可欠です。 ○主に弱視の場合、室内における照明の状況に応じて、窓を背にして座ってもらうなどの配慮が必要です。 聴覚・言語障害(ろうあ・難聴) 主な特性 ○先天性のろう者の場合は、手話でコミュニケーションをとる人も多くみられます。 ○難聴者は補聴器や人工内耳で聞こえを補います。 ○補聴器や人工内耳を装用している場合、スピーカーを通じる等、残響や反響のある音は、聞き取りにあまり効果が得られないことがあります。 ○聴覚障害は外見上わかりにくい障害であり、その人が抱えている困難も他の人からは気づかれにくい側面があります。 ○聴覚障害者のコミュニケーション方法には手話、筆談、口話など様々な方法がありますが、どれか一つで十分ということではなく、多くの聴覚障害者は話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせるなど使い分ける必要があります。 ○聴覚の活用による言葉の習得に課題があることにより、聴覚障害者の国語力は様々であるため、筆談の場合は、相手の状況に合わせる必要があります。 主な対応 ○手話や文字表示など、目で見てわかる情報を提示する配慮が必要です。 ○補聴器や人工内耳を装用し、残響や反響のある音を聞き取ることが困難な場合には、代替する対応への配慮(磁気誘導ループの利用など)が必要です。 ○音声だけで話すことは極力避け、視覚的なより具体的な情報も併用する必要があります。 ○スマートフォンなどのアプリに音声を文字に変換できるものがあり、これらを使用すると筆談を補うことができます。 盲ろう(視覚と聴覚の重複障害) 主な特性 ○視覚と聴覚の重複障害の人を「盲ろう」と呼んでいますが、障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられます。(視覚障害、聴覚障害の項も参照のこと) <見え方と聴こえ方の組み合わせによるもの> @全く見えず聴こえない状態の「全盲ろう」 A見えにくく聴こえない状態の「弱視ろう」 B全く見えず聴こえにくい状態の「盲難聴」 C見えにくく聴こえにくい状態の「弱視難聴」 <各障害の発症経緯によるもの> @盲(視覚障害)から聴覚障害を伴った「盲ベース盲ろう」 Aろう(聴覚障害)から視覚障害を伴った「ろうベース盲ろう」 B先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症する「先天性盲ろう」 C成人期以後に視覚と聴覚の障害が発症する「成人期盲ろう」 ○盲ろう者がそれぞれ使用するコミュニケーション手段は、障害の状態や程度、盲ろうになるまでの経緯、あるいは生育歴、他の障害との重複の仕方によって異なり、介助方法も異なります。 ○テレビやラジオを楽しんだり本や雑誌を読むことなどもできず、家族といてもほとんど会話がないため、孤独な生活を強いられていることがあります。 主な対応 ○盲ろう者関係機関に相談し、対応に関する助言を受けることが有効です。 ○障害の状態や程度に応じ視覚障害や聴覚障害の人と同じ対応が可能な場合がありますが、同様な対応が困難な場合が多く、手書き文字や触手話、指点字などの代替する対応への配慮や移動の際にも配慮する必要があります。 ○言葉の通訳に加えて視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝える必要があります。  例:状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)など 肢体不自由者(車いすを使用されている場合) 主な特性 ○脊髄損傷(対麻痺又は四肢麻痺、排泄障害、知覚障害、体温調節障害など) ○脳性麻痺(不随意運動、手足の緊張、知的障害重複の場合もあります。) ○脳血管障害(片麻痺、運動失調) ○病気等による筋力低下や関節損傷などで歩行が困難な場合もあります。 ○ベッドへの移乗、着替え、洗面、トイレ、入浴など、日常の様々な場面で援助が必要な人の割合が高い傾向にあります。 ○車いす使用者にとっては、段差や坂道が移動の大きな妨げになります。 ○手動車いすの使用が困難な場合は、電動車椅子を使用する場合もあります。 ○障害が重複する場合には、呼吸器を使用する場合もあります。 主な対応 ○段差をなくす、車いす移動時の幅・走行面の斜度、車いす用トイレ、施設のドアを引き戸や自動ドアにするなどの配慮が求められます。 ○机アプローチ時に車椅子が入れる高さや作業を容易にする手の届く範囲の考慮が必要です。 ○ドア、エレベータの中のスイッチなどの機器操作のための配慮が必要です。 ○目線をあわせて会話する必要があります。 ○脊髄損傷者は体温調整障害があるため、部屋の温度管理に配慮が必要です。 肢体不自由者(杖などを使用されている場合) 主な特性 ○脳血管障害(歩行可能な片麻痺、運動失調) ○麻痺の程度が軽いため、杖や装具歩行が可能な場合や、切断者などで義足を使用して歩行可能な場合は、日常生活動作は自立している人が多くみられます。 ○失語症や高次脳機能障害がある場合もあります。 ○長距離の歩行が困難であったり、階段、段差、エスカレーターや人混みでの移動が困難な場合もあり、配慮が必要です。 主な対応 ○上下階に移動するときのエレベータ設置・手すりの設置などの配慮が求められます。 ○滑りやすい床など転びやすいため、雨天時などの対応に留意が必要です。 ○トイレでの杖おきの設置や靴の履き替えが必要な場合にいすを用意するなどの配慮が必要です。 ○上肢の障害があれば、片手や筋力低下した状態で作業ができる配慮が必要です。 構音障害 主な特性 ○話す言葉自体を聞き取ることが困難な状態です。 ○話す運動機能の障害、聴覚障害、喉頭摘出などの原因があります。 主な対応 ○しっかりと話を聞く必要があります。 ○会話補助装置などを使ってコミュニケーションを取ることも考慮する必要があります。 失語症 主な特性 ○聞くことの障害  音は聞こえますが言葉の理解に障害があり話の内容が分からないことがあります。  また、単語や簡単な文なら分かる人でも早口や長い話になると分からなくなることがあります。 ○話すことの障害  伝えたいことをうまく言葉や文章にできない、発話がぎこちない、言いよどみが多くなったり、誤った言葉で話したりすることがあります。 ○読むことの障害  文字を読んでも理解が難しいことがあります。 ○書くことの障害  書き間違いが多い、また「てにをは」などを上手く使えない、文を書くことが難しいことがあります。 主な対応 ○表情が分かるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短い言葉や文章で、分かりやすく話しかける必要があります。 ○一度で上手く伝わらない時は、繰り返して言ったり、別の言葉に言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示したりすると理解しやすくなります。 ○「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると理解しやすくなります。 ○話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなります。 高次脳機能障害 交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで生じる認知や行動に生じる障害です。 身体的には障害が残らないことも多く、外見では分かりにくいため「見えない障害」とも言われています。 主な特性 【記憶障害】 ○すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりすることがあります。 【注意障害】 ○集中力が続かなかったり、ぼんやりしてしまい、何かをするとミスが多く見られることがあります。 ○二つのことを同時にしようとすると混乱することがあります。 ○主に左側で、食べ物を残したり、障害物に気が付かないことがあります。 【遂行機能障害】 ○自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てられないことがあります。 【社会的行動障害】 ○ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすいこだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢できないことがあります。 ○思い通りにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりすることがあります。 【病識欠如】 ○上記のような症状があることに気づかず、できるつもりで行動してトラブルになることがあります。 ○失語症(失語症の項を参照)を伴う場合があります。 ○片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害を持つ場合があります。 主な対応 ○本障害に詳しいリハビリテーション専門医やリハ専門職、高次脳機能障害支援普及拠点機関、家族会等に相談することが有効です。 【記憶障害】 ○手がかりがあると思い出せるので、手帳やメモ、アラームを利用したり、ルートマップを持ち歩くなどすることが有効です。 ○自分でメモを取ってもらい、双方で確認する必要があります。 ○残存する受傷前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅周囲では迷わず行動できるなど)ことが有効です。 【注意障害】 ○短時間なら集中できる場合もあるので、こまめに休憩を取るなどが有効です。 ○一つずつ順番にやることが有効です。 ○左側に危険なものを置かないよう配慮する必要があります。 【遂行機能障害】 ○手順書を利用することが有効です。 ○段取りを決めて目につくところに掲示することなどが有効です。 ○スケジュール表を見ながら行動したり、チェックリストで確認することが有効です。 【社会的行動障害】 ○感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る必要があります。 ○予め行動のルールを決めておくことが有効です。 内部障害 主な特性 ○心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、肝機能、HIVによる免疫機能のいずれかの障害により日常生活に支障があります。 ○疲れやすく、長時間の立位や作業が困難な場合があります。 主な対応 ○常に医療的対応を必要とすることが多いため留意が必要です。 ○ペースメーカーは外部からの電気や磁力に影響をうけることがあるので、注意すべき機器や場所などの知識を持つ必要があります。 ○排泄に関し、人工肛門の場合、パウチ洗浄等特殊な設備が必要となることへの配慮が必要です、 ○人工透析が必要な人については、通院への配慮が必要です。 ○呼吸器機能障害のある方は、慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があることを理解し、息苦しくならないよう、楽な姿勢でゆっくり話をしてもらうよう配慮が必要です。 ○常時酸素吸入が必要な方は、携帯用酸素ボンベが必要な場合があることを理解する必要があります。 難病 主な特性 ○神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病など様々な疾病により多彩な障害が生じます。 ○常に医療的対応を必要とすることが多いため留意が必要です。 ○病態や障害が進行する場合が多いため留意が必要です。 主な対応 ○専門の医師に相談することが有効です。 ○それぞれの難病の特性が異なるため、その特性に合わせた対応が必要です。 ○進行する場合、病態・障害の変化に対応が必要です。 ○排泄の問題、疲れやすさ、状態の変動などに留意が必要です。 知的障害 主な特性 ○概ね18歳頃までの心身の発達期に現れた知的機能の障害により、生活上の適応に困難が生じます。 ○「考えたり、理解したり、読んだり、書いたり、計算したり、話したり」する等の知的な機能に発達の遅れが生じます。 ○金銭管理、会話、買い物、家事などの社会生活への適応に状態に応じた援助が必要です。 ○主な原因として、ダウン症候群などの染色体異常、または先天性代謝異常によるものや、脳症や外傷性脳損傷などの脳の疾患がありますが、原因が特定できない場合もあります。 ○てんかんを合併する場合があります。 ○ダウン症の場合の特性として、筋肉の低緊張、多くの場合、知的な発達の遅れがみられることがあります。  また、心臓に疾患を伴う場合があります。 主な対応 ○言葉による説明などを理解しにくいため、ゆっくり、丁寧に、分かりやすく話すことが必要です。 ○文書は、漢字を少なくしてルビを振るなどの配慮で理解しやすくなる場合がありますが、一人一人の障害の特性により異なります。 ○写真、絵、ピクトグラムなど分かりやすい情報提供を工夫する必要があります。 ○説明が分からないときに提示するカードを用意したり、本人を良く知る支援者が同席するなど、理解しやすくなる環境を工夫する必要があります。 自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム) 主な特性 ○相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強くみられます。 ○見通しの立たない状況では不安が強いですが、見通しが立つ時はきっちりしています。 ○大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労していますが、それが芸術的な才能に繋がることもあります。 主な対応 ○肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫が必要です。(何かを伝えたり依頼する場合には、必ずその意図や目的を伝えたり、図やイラストなどを使って説明するなど) ○スモールステップによる支援が有効です。(手順を示す、モデルを見せる、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつにするなど) ○感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整を行う必要があります。  (イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所を衝立などで区切る、クーラー等の設備のある部屋を利用できるように配慮するなど) 学習障害(限局性学習障害) 主な特性 ○「話す」「理解」は普通にできますが、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力していても極端に苦手です。 主な対応 ○得意な部分を使って情報アクセスし、表現できるようにすることが有効です。 (ICTの活用など) ○苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減する、柔軟な評価をすることが有効です。 注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害) 主な特性 ○次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多くみられます。 主な対応 ○短く、はっきりした言い方で伝える必要があります。 ○待合室における気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルール提示などの配慮が必要です。 ○ストレスケアが必要です。(傷つき体験への寄り添い、適応行動が出来たことへのこまめな評価) その他の発達障害 主な特性 ○体の動かし方の不器用さ、我慢していても声が出たり体が動いてしまったりするチック、一般的に「どもる」と言われるような話し方なども、発達障害に含まれます。 主な対応 ○叱ったり拒否的な態度を取ったりするのではなく、日常的な行動の一つとして受け止めるなど、楽に過ごせる方法を一緒に考えることが有効です。 精神障害 主な特性 ○精神障害の原因となる精神疾患は様々であり、原因となる精神疾患によって、その障害特性や制限の度合いは異なります。 ○精神疾患には、いくつもの種類があり、その中には長期に渡り、日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態が続くものがあります。 ○代表的な精神疾患として、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)等があります。 精神障害(統合失調症の場合) ○発症の原因は様々ですが、およそ100人に1人の割合でかかる、比較的一的な病気です。 ○「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状ですが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られています。 【陽性症状】 ○「幻覚」:実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと。  中でも自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い ○「妄想」:明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと。  誰かにいやがらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想などがあります。 【陰性症状】 ○意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなります。 ○疲れやすく集中力が保てず、人づきあいを避け引きこもりがちになることがあります。 ○入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となることがあります。 【認知や行動の障害】 ○考えにまとまりがなく何が言いたいのか分からなくなることがあります。 ○相手の話の内容がつかめず、周囲に上手く合わせることができなくなることがあります。 【感情の障害】 ○感情の動きが少なくなることがあります。 ○他人の感情や表情についての理解が苦手になることがあります。 ○その場にふさわしい感情表現ができなくなることがあります。 主な対応 ○統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要があります。 ○薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する必要があります。 ○社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守ることが有効です。 ○一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心掛ける必要があります。 ○一度に多くの情報が入ると混乱するため、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心掛ける必要があります。 精神障害(双極性障害(躁うつ病)の場合) 主な特性 ○気持ちが強く落ち込んだり(うつ状態)、逆に過剰に活発になったり(躁状態)することを波のように繰り返します。 ○うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状が出ることがあります。 ○躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりすることがあります。  その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でも出来ると思い込んで人の話を聞かなくなることがあります。 主な対応 ○専門家の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する必要があります。 ○薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する必要があります。 ○うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する必要があります。 ○躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談することが有効です。 ○自分を傷つけてしまったり、自殺に至ることもあるため、自殺などを疑わせるような言動があった場合には、本人の安全を確保した上で速やかに専門家に相談する必要があります。 精神障害(依存症(アルコール)の場合) 主な特性 ○飲酒したいという強い欲求がコントロールができず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで身体的、社会生活上の様々な問題が生じます。 ○体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラなどの離脱症状が出ることがあります。 ○一念発起して断酒しようとしても、離脱症状の不快感や、日常生活での不安感から逃れるために、また飲んでしまうことがあります。 主な対応 ○本人に病識がなく(場合によっては家族も)、アルコール依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人・家族・周囲が理解する必要があります。 ○周囲の対応が結果的に本人の飲酒につながってしまう可能性があるため、家族も同伴の上で、アルコール依存症の専門家に相談する必要があります。 ○一度断酒しても、再度飲酒してしまうことが多いため、根気強く本人を見守る必要があります。 精神障害(てんかんの場合) 主な特性 ○何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作がおきます。 ○発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがあります。 主な対応 ○誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導の下に内服治療を行うことで、多くの者が一般的な生活が送れることを理解する必要があります。 ○発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なため、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しないよう留意が必要です。 ○内服を適切に続けることが重要です。また、発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談が必要です。 精神障害(認知症の場合) 主な特性 ○認知症とは、単一の病名ではなく、種々の原因となる疾患により記憶障害など認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態を指します。 ○原因となる主な疾患として、 アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病など)があります。 ○認知機能の障害の他に、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状(徘徊、不穏、興奮、幻覚、妄想など)があります。 主な対応 ○高齢化社会を迎え、誰もが認知症とともに生きることになる可能性があり、また、誰もが介護者等として認知症に関わる可能性があるなど、認知症は皆にとって身近な病気であることを理解する必要があります。 ○各々の価値観や個性、想い、人生の歴史等を持つ主体として尊重し、できないことではなくできることに目を向けて、本人が有する力を最大限に活かしながら、地域社会の中で本人のなじみの暮らし方やなじみの関係が継続できるよう、支援していく必要があります。 ○早期に気付いて適切に対応していくことができるよう、小さな異常を感じたときに速やかに適切な機関に相談できるようにする必要があります。 ○BPSDについては、BPSDには何らかの意味があり、その人からのメッセージとして聴くことが重要であり、BPSDの要因として、様々な身体症状、孤立・不安、不適切な環境・ケア、睡眠や生活リズムの乱れなどにも目を向ける必要があります。 ○症状が変化した等の場合には、速やかに主治医を受診し、必要に応じて専門機関に相談することなどを促す必要があります。