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掲載日:2019年12月9日

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企画財政委員会視察報告

期日

令和元年9月2日(月曜日)~4日(水曜日)

調査先

   (1)   名古屋鉄道株式会社、名鉄バス株式会社(名古屋市)
   (2)   一般社団法人 常業(つねなり)(岡崎市)
   (3) 道の駅「おばあちゃん市・山岡」(恵那市)
   (4) 公立大学法人 愛知県立大学長久手キャンパス(長久手市)

調査の概要

(1) 名古屋鉄道株式会社、名鉄バス株式会社

(交通体系の整備について)

【調査目的】

   名古屋鉄道株式会社及び名鉄バス株式会社は、国立大学法人群馬大学とともに、自動運転バスの実証実験を尾張旭市及び長久手市において、平成31年4月8日(月曜日)から12日(金曜日)までの5日間実施した。同実証実験は、自動運転バスの運行や安全性向上に向けた検証と、自動運転に対する社会受容性の醸成を目的に実施したものである。なお、公道におけるバスの自動運転の実証実験は、愛知県内では初の取組となる。また、実証実験はその背景として、バス運転士の人材不足や高齢化などの問題がある。
   本県においても、急速な高齢化の進行により、移動手段のない高齢者の増加が見込まれており、多角的な角度から研究をし、地域交通の維持・確保を行っていく必要がある。本県の地域公共交通にかかる政策の今後を考える上で、この取組を参考にする。

【調査内容】

   同実証実験は、愛知県が推進する国家戦略特区事業の支援を受けて進められ、実際の走行は、名古屋鉄道瀬戸線尾張旭駅を出発し、長久手市の愛知医科大学病院を到着点とする4.5kmの区間で実施された。自動運転バスの運行に当たっては、群馬大学等が研究開発を行っている自動運転車や運行管制システムが活用された。また、実証実験は、国家戦略特区の事業として、民間事業者による公道での自動運転実証実験の促進のために、平成29年に愛知県に設置された「あいち自動運転ワンストップセンター」の支援を受けて行われており、官民学の連携により実施されたものでもある。
   実証実験では、運転手は乗車するが、ハンドルやアクセル、ブレーキは自動となる「レベル2」に相当する技術の安全性の検証が行われた。また、最終日には一般公募したモニターも乗車した。この自動運転バスは、踏切など安全確認が必要な箇所では自動停止し、運転手が安全を確かめた後、出発ボタンを押すと再びバスが動き出す。また、名鉄の尾張旭駅から愛知医科大病院までの4.5kmを時速約25kmで走行する。なお、実証実験が行われた路線は、適度な交通量があり、開けた場所が多いことからGPSの精度が良く、実験地として最適であるとして選定されたものである。
   車内では、NTTデータの案内ロボット「SOTA君」によるアナウンスも行われ、和やかなムードづくりにも配慮された。なお、実証実験は行政からの補助金を使用せず、名鉄及び名鉄バスが主体となって行われたものである。実験にかかる調整や手続についても専門のコンサルタントに委託することなく、両社の社員が自ら行っており、中部地方における公共交通の要である両社が「愛知県初の公道実証実験」に向けて、強い意気込みをもって取り組んだことがうかがえる。
   特に地方の過疎地域などでは、バス路線の採算性が低い上、深刻な運転手不足が課題となっている。運転手を必要としない自動運転バスはその両方の課題を解決する存在として、期待が寄せられている。一方、機械の不調等による事故のリスクや、無人の車両が人に損害を与えた場合の責任の所在など、法整備についても検討が必要である。また、客が乗車した状態での急ブレーキの当否、車輌や乗客に障害が発生した際の対応方法なども、将来の実用化に向け、検討すべき事項とされているとのことであった。
   概要説明の後、質疑が行われ、「今回はレベル2での実証実験であったが、レベル4まで対応可能な自動運転バスをなぜレベル2まで抑えて実験を実施したのか」との質問に対し、「公道での実証実験は、現状では法規制等でレベル2までしか実施できない。中部国際空港と国際展示場を結ぶ県有地内で先ごろ実施した実証実験では、許可等が必要ないのでレベル4の水準で実施したそうである」との回答があった。
   今回視察先を調査できたことは、本県における交通体系整備に向けた取組を推進する上で大変参考となるものであった。

(2) 一般社団法人 常業(つねなり)

(地域活性化の取組について)

【調査目的】

   一般社団法人常業では、東海道・旧代官屋敷の再生による地域資源の活用事業を実施するため、旧冨田家住宅と土蔵を大規模改修し、旧代官屋敷はイタリアンレストラン、土蔵は郷土資料館として今年5月にオープンさせた。同事業は、地域資源を生かした先進的で持続可能な事業で、地域経済の循環効果を創出する高い新規性・モデル性を有することが要件である国の「地域経済循環創造事業補助金」の採択を受けて実施したものである。
   本県においても、北部や西部地域など人口減少が始まっている地域もあり、地域資源の活用や空き家対策などの地域における持続可能な取組が求められている。本県の地域活性化に向けた取組への参考とするため、歴史的資源の活用により地域交流の拠点を創出する同事業の視察を行うものである。

【調査内容】

   愛知県岡崎市の本宿地区は、鉢地川が山を削ってできた低地に発達し、なだらかな山々の緑とこれらを源にする川などがある豊かな自然に恵まれている。古くから、人々の往来が盛んで、鎌倉街道や東海道といった道が整備され、文化が育む素晴らしい景観が形成されてきた。明治時代に入ると、交通の要衝として栄え、昭和9年には、モダンな駅舎の本宿駅ができ蒲郡につながる最新型のボンネットバスが運行して多くの人々が訪れるようになり、また、駅前には商店が立ち並ぶようになる。昭和26年には、国道1号が整備され自動車交通の往来も激しくなるが、一方で、旧東海道は静かな佇まいが残り、歴史や文化が色濃く残る沿線は、歩くにはとても居心地がよい空間が確保されている。
   冨田家旧代官屋敷は「木南舎(もくなんしゃ)」の愛称で地域に親しまれ、「元禄の世直し」から明治維新に至るまで柴田家家臣として陣屋代官を世襲した冨田家の旧主屋として、1827年(文政十年)に上棟された。冨田家の祖は大江国豊で、1432年に足利6代将軍の富士遊覧で京より下向した折に、三河国加茂郡冨田(現豊田市)に住み着いたといわれている。その後6代を経て、冨田元右衛門重庸が1700年代前半に柴田家家臣として初代本宿陣屋代官となり、本宿村冨田家の始祖となった。当社団法人の法人名ともなっている5代目の冨田群蔵常業は、1789 年に吉田藩士西岡家の三男として生まれ、1815 年に本宿陣屋代官に就任した。郡蔵は知識人で学問や歌道に研鑽し、また、天保の大飢饉のときにかんがい池を造成するなど代官としても勧農殖産に手腕を発揮した経世家であった。
   旧代官屋敷は、桁行10間、梁間6間半、切妻造、平入、2階建、桟瓦葺の建物で、屋根上部に煙出しを設け屋根背面を葺き下し、柱は面取角柱で居室部分の柱間に差鴨居を入れて軸部を固め、小屋組は登り梁として2階部分の居室空間を確保している。このように、旧代官屋敷は江戸時代後期の格式ある住宅建築で近世の姿を今に良くとどめている。しかし、ここ50年ほどは空き家となっており、雨漏りや床が落ちてしまうなど劣化が進んでいた。冨田家14代目で冨田病院院長である冨田裕代表理事は「歴史ある建物を再生し活用できないか」と、4年ほど前から模索していた。そんな中、一般社団法人全国古民家再生協会の方と話をする機会があり、国の交付金事業を活用し、古民家の再生による地域活性化事業に着手することに思い至ったとのことであった。
   古民家の本格的な改修工事は平成30年の夏から開始した。静岡県から宮大工を招き、柱の下の傷んだ部分の修復や、三河の瓦7,000枚で屋根をふき替えるなどの大掛かりな作業を実施した。これにより、見事に温かな雰囲気の古民家に生まれ変わった。古民家を現代に生かすための取組として、病院の周辺は飲食店が少ないことから、遠くから来院した患者の家族や観光客らが食事できる場所として、イタリアンレストラン「ユギーノ・ユーゴ」を令和元年5月にオープンさせた。また、土蔵は文化・芸術を発信する郷土資料館として生まれ変わった。
   概要説明を受けた後、敷地及び建物内を見学し、視察終了後は常業の方々と「ユギーノ・ユーゴ」で昼食をとりながら活発な意見交換を行った。
   今回視察先を調査できたことは、本県の地域活性化の取組を推進するために、大変参考となるものであった。

企財_常業(つねなり)にて

常業(つねなり)にて

(3) 道の駅「おばあちゃん市・山岡」

   (地域振興の推進について)

【調査目的】

   岐阜県恵那市山岡町にある、「日本一の巨大水車」がランドマークの道の駅「おばあちゃん市・山岡」は、県道33号線沿いに平成16年に開設され、年間50万人以上が訪れる人気の道の駅である。道の駅は、平成5年に103か所が初めて登録されてから、今では全国で1,100か所以上が設置されている。そのような中、各種旅行雑誌等における全国の道の駅人気調査では、同道の駅は、常に上位にランキングされている。従業員は地元の70代の女性が中心であり、単なる観光スポットではなく、高齢者の生きがいの場となっていることが集客につながっている。
   本県でも急速に高齢化が進む中で、継続的な地域振興のために高齢者のふれあいや活躍の場が必要とされている。本県における地域振興施策の参考とするため、同施設の取組を調査する。

【調査内容】

   平成16年4月に開業した道の駅「おばあちゃん市・山岡」は、「株式会社山岡のおばあちゃん市」により運営されている。岐阜県の南東の山間に位置する恵那市は、愛知県と長野県に接しており、自然の恵みが豊かな環境である。小里川ダムに隣接する同道の駅周辺には、観光スポットや特産品も数多く存在している。営業時間は9時~18時(冬季は17時まで)で、年中無休、駐車場は大型車6台、普通車55台あり、売店・レストラン等を備えた中規模の道の駅である。
   周辺地域では、陶土用の砕石製造の動力として、古くから水車を利用してきたことから、その名残として直径24mの木造巨大水車が建設された。なお、寄居町の「県立川の博物館」の水車が今年7月の建替えにより、日本一に返り咲いている。
   同道の駅では、地場の野菜をふんだんに使った「おふくろの味定食」が口コミで人気メニューとなっているほか、旧山岡町の特産品である寒天を使った料理・加工品をはじめとして、菓子、漬物、木工品、手芸品など「地元産・手づくり」にこだわった商品を販売している。なお、同道の駅の開設前から旧山岡町には、平成7年から開始した「山岡のおばあちゃん市 日曜朝市」や、平成12年に開設された産直店舗「山岡のおばあちゃん市手作りの店」があった。これらの店舗は、地元で作られた新鮮な農産物を使った食事や加工品などが評判となっており、おばあちゃんたちが元気に働く、地域交流の場となっていた。これらの事例を生かして作られた同道の駅では、70代の女性が中心となって働いており、「町の観光スポットとなることよりも、むしろ、地元の高齢者の生きがいの場となっていることが集客につながっている」との話であった。
   売店で販売されている加工品を作る地元の高齢者には、60歳を超えてから起業し、自宅に加工場を設置し、食品製造の免許を取得した方も多い。また、販売されている商品の生産者の平均年齢は、75歳という高齢である。このほか、地域の伝統菓子「からすみ」や「山岡の手作り餅」など、年間1,000万円以上を売上げる人気商品もあり、元気な高齢者の活力が当地域の活性化に貢献している。
   概要説明の後は、施設内を見学しながら活発な質疑が行われた。今回視察先を調査できたことは、本県における地域活性化の取組を一層推進するために大変参考となるものであった。

企財_道の駅・山岡にて

道の駅・山岡にて

(4) 公立大学法人 愛知県立大学長久手キャンパス

   (県重要施策の推進について)

【調査目的】

   愛知県では、3つの中期的産業育成課題と13の課題解決の方向性を掲げ、県内の産業育成に重点的に取り組んでいる。国内の生産年齢人口が減少傾向にあるため、経済の規模を維持するためには、IoTなどの新たな技術の活用による生産性の向上が必要とされる。そこで、同県は、愛知県立大学情報科学部への事業委託により、平成28年に「愛知県IoT活用相談窓口」を設置した。これにより、同大学の教員やIoT導入に精通したコーディネーターが中小企業からの相談や、実証実験、マッチング支援に対応している。
   本県の重要施策である県内中小企業の「IoT、AIの活用支援」の参考とするため、同大学の取組を視察する。

【調査内容】

   愛知県立大学は昭和32年に4年生の女子大学として創立され、開学時は文学部、外国語学部などが中心であった。平成10年に名古屋市内から長久手市に移転するとともに、初の理系学部である情報科学部を設置した。現在は同学部の3コースを情報システムコース、メディア・ロボティクスコース、シミュレーション科学コースとし、情報科学を基礎とした工学的人材養成を行っている。「第4次産業革命をリードする人材育成の拠点」をスローガンに、同学部は世界で活躍出来る人材の育成を目指している。
   愛知県では、中期的産業育成課題として次の3つを設定し、県内の産業育成に重点的に取り組んでいる。(1)自動車の電動化、情報化、知能化及びMaaS(※)に係る100年に一度の大変革期に対応した新しいビジネスモデルの構築。(2)AI・IoT・ビッグデータを活用したスマートファクトリーの実現。(3)時代の流れに敏感に対応したモノづくり基盤技術の更なる高度化及び新しいビジネスモデルの構築。(※Mobility as a Service)
 この政策課題を実現するため、同県は28年7月に「愛知県IoT推進ラボ」を設立し、IoTの導入や利活用を目指す県内中小企業等を対象として、(1)製造現場へのIoT導入に関する相談対応、(2)実証実験の支援、(3)IoT導入を図るニーズ企業と提供を図るシーズ企業のマッチング支援、などの取組を行っている。この取組の一環として、愛知県立大学に運営委託する形で「愛知県IoT活用相談窓口」を設置し、中小企業等からの相談に応じているとのことであった。
   また、同大学では、「情報技術で世界と戦える愛知を創る教育研究拠点」を実現するため、同学部内にロボット分野の教育研究拠点として「愛知県立大学次世代ロボット研究所」を平成28年4月に設置した。同研究所の主な諸元としては、鉄骨造2階建、延床面積992.13平方メートルの規模があり、RGB可変ライトにより、色合いの異なる照明環境を創出可能な照明設備を備え、縦16m×横28m×高さ8.5mの広大な屋内実験スペースを保有している。同研究所では、具体的には「ロボット同士の連係技術の開発(例:サッカーロボット、ドローン)」、「ロボットと人との連係技術の開発(例:福祉ロボット活用研究)」及び「ロボット研究所を活用したカリキュラムの実施」に取り組んでいる。
   このほか、施設の特長としては「十分な実証実験スペース(広面積・高天井の屋内空間)」、「ユニークな照明環境(光の三原色を調整し、色合いの異なる様々な照明環境を創出可能)」及び「空間内の物体の3次元的な計測が可能(人、ロボットの正確な位置・動作の把握)」などがあり、民間事業者の試験等にも利用されている。
   概要説明の後、質疑が行われ、「企業と連携した共同研究におけるポイントや、双方のメリットなどについて伺いたい」との質問に対し「大学側としては、日本や世界で最先端、学術的に他ではやっていない取組に興味がある。一方、企業側としては5年後10年後にビジネスに乗るような最先端の取組を掘り下げたいと思っている。そのため、すり合わせをしながら、双方にメリットが生まれるような取組を進めている」との回答があった。その後、次世代ロボット研究所施設内の見学を行った。
   今回視察先を調査できたことは、本県における重要施策の推進のために大変参考となるものであった。

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議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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