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掲載日:2023年1月18日

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環境農林委員会視察報告

期日

令和4年11月21日(月曜日)~22日(火曜日)

調査先

(1) 滋賀県企業庁馬渕浄水場(近江八幡市)
(2) 有限会社フクハラファーム(彦根市)

調査の概要

(1) 滋賀県企業庁馬渕浄水場

(再生可能エネルギーの導入拡大について)

【調査目的】

 滋賀県では、2030年までに再生可能エネルギーとコージェネレーションで電力の自給率を30%以上に高める「しがエネルギービジョン」を進め、上水道施設の送水管で発生する余剰圧力を活用した「管水路用マイクロ水力発電システム」を本格稼働させた。2018年9月に株式会社DK-Power(ダイキン工業株式会社の100%子会社)とマイクロ水力発電事業基本協定を締結し、2020年7月から、長福寺分水所において、県内初の給水管水路を利用したマイクロ水力発電を開始した。
 当該取組を視察することにより、本県における再生可能エネルギーの導入拡大の取組の参考とする。

【調査内容】

 滋賀県では、2050年までに県域からのCO2排出量実質ゼロの実現に向けて、再エネ拡大と省エネにより、化石燃料への依存からの脱却を図り 、真の意味で持続可能な社会の実現に向けて「滋賀県CO2ネットゼロ社会づくりの推進に関する条例」を制定した。さらに、本年3月には、温暖化対策とエネルギー政策を一体的かつ効果的・効率的に進めるため、「しがエネルギービジョン」等の従来計画を一本化し、「滋賀県CO2ネットゼロ社会づくり推進計画」を策定した。同計画では、2030年の中期目標として、温室効果ガス排出量を2013年度基準で50%削減すること、再エネ導入を2019年度比で2.1倍とすることを掲げている。
 株式会社DK-Powerは、ダイキン工業株式会社が環境省の事業の採択を受け開発した「管水路用マイクロ水力発電システム」を用い、50kW未満の発電事業を行うスタートアップ企業である。同社のビジネスモデルは、自治体の保有する水道施設に、同社が同システムを設置し、管理運用、売電を行い、一方、自治体は設置コストを負担することなく、水力と場所の提供への対価を得るというものである。また、水力発電は水が流れている限り発電し続けることから、自然災害により通常の電力系統がダウンした場合、自動で自立運転システムに切り換え、応急給水拠点や避難所等に非常用電源として活用できる機能も今年新たにリリースするとのことであった。
 視察先の長福寺分水マイクロ水力発電所の最大発電出力は、35kWで、年間発電電力量は一般家庭50軒程度の電気使用量に相当する173,000kWhである。通常の水力発電は、自然流下の高低差を利用して発電を行うが、本施設は琵琶湖から取水した水を、ポンプで高地にある調整池へと送水する際の余剰圧力を利用し発電している。同社によると、関東平野などの平地では取水した水を、ポンプを使い家庭等のある高地へ送水するため、多くの地点でポンプの余剰圧力が活用できると見込まれるという。
 概要説明後、委員からは活発な質問が行われた。その中で、「人口減少により水需要が減少し、発電に必要な流量が確保できなくなる可能性があるが、マイクロ水力発電の可能性をどう考えるか」との質問に対し、「50kW未満での発電は採算が取れないという思い込みから検討していない自治体が多い。また、人口減少により市町村の県の用水供給への依存率上昇が見込めることから、発電に必要な適正流量が確保できると見込んでおり、まだまだ伸び代があると考えている」との回答があった。質問の後、同庁及び同社職員と共に同発電所へ移動し、発電設備等について解説を受けながら見学した。
 今回視察先を調査できたことは、本県における再生可能エネルギーの導入拡大の取組を充実させるために大変参考となるものであった。

視察の画像

滋賀県企業庁長福寺分水マイクロ
水力発電所にて

(2) 有限会社フクハラファーム

(スマート農業の推進について)

【調査目的】

 有限会社フクハラファームは、アイガモ農法による有機栽培からAI等の最新技術まで、様々な手法を駆使し、地域の環境に配慮した農業を行う農業生産法人である。同社は、2014年から5年間、九州大学等と連携し、ドローンによる生育情報収集や営農情報の可視化など農業の「見える化」に取り組み、農地拡大を実現した。また、2019年度には農林水産省のスマート農業実証プロジェクトに参画し、ロボットトラクターや自動田植機、AI搭載のキャベツ全自動収穫機などを用いた水稲と麦、キャベツの輪作におけるスマート農業体系の構築に取り組み、労働時間の大幅削減や収量増加を達成している。
 同法人の取組や施設を視察することにより、本県におけるスマート農業の推進に係る施策についての参考とする。

【調査内容】

 有限会社フクハラファームは、琵琶湖のほとり、滋賀県彦根市南部にある稲枝地区を中心に本州最大規模となる200ha超の農地を預かり、大規模農業を営んでいる。
 同社の従業員数は役員2名、正規社員14名、アルバイト3名の計19名である。資本金は2,200万円で、農産物販売額は約3億8,000万円である。創業当初2haだった同社の経営面積は現在218haとなり、府県平均2.08haの約100倍を誇る。同地区には、農協を窓口とした農地集積組織があり、生産者による利用権の交換など、担い手への農地集積が進んでいる。同社は担い手のいる集落については、地域の担い手に任せる方針を取り、担い手のいない地域を開拓しているという。
 同社の特徴的な取組に、連坦化が挙げられる。1,000筆を約300筆に連坦化しており、平均ほ場面積は約70aと広大である。また、複合経営・二毛作を行っているが、大豆の収量が上がらず、販路が農協に限られていたことから、従来の米麦大豆から、米麦キャベツへとシフトし、麦後加工米、麦後キャベツを導入している。
 同社は、区画の拡大と直播の導入により、5年比較で水稲の作業時間を3割削減し、削減した労働力を春キャベツの導入や、キャベツの秋穫りへ分配することで利益の拡大を図っている。大区画ほ場でこそ、オートトラクタやGPS搭載作業機が生きるという考えの下、キャベツの畝立てやGPSブロキャスによる元肥散布等を実施している。また、計画・記録をしっかり付けることが重要と考え、営農記録アプリ「アグリノート」を活用し、先代の技を数字で裏打ちし、記憶に頼る農業から脱却したノウハウ継承に取り組む。さらに、LINEなどを活用し、作業の進捗を社内全体で共有する仕組みも構築している。
 スマート農業は、「何のために」という経営者の目的意識に基づいた導入が重要という。オートトラクタなどのスマート農機は、1から2ha以上のほ場でようやく意味が出るもので、ほ場の区画拡大と農地集約により、導入コストが見出せたという。
 今後は、コロナ禍後も米価やコメの需要は戻らないという想定の下、更なるコスト削減と収益の確保が必須と考え、複合経営の加速と大区画化を進めるとともに、真の経営継承に向けて、生産技術のみならず販売や経営管理のルール作りに取り組んでいくという。
 概要説明後、委員からオートメーションの今後や深層施肥の効果など活発な質問が行われた。質問の後、同社のライスセンターやスマート農機の見学を行った。
 今回視察先を調査できたことは、農業におけるICTの活用について、本県における取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

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議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

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