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掲載日:2019年11月26日

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福祉保健医療委員会視察報告

期日

令和元年9月2日(月曜日)~4日(水曜日)

調査先

   (1) 大阪市長居障がい者スポーツセンター(大阪市)
   (2) ロート製薬株式会社(グランフロント大阪オフィス)(大阪市)
   (3) 京都大学医学部附属病院(京都市)
   (4) 株式会社島津製作所ヘルスケアR&Dセンター(京都市)

調査の概要

(1) 大阪市長居障がい者スポーツセンター

(障害者スポーツの推進について)

【調査目的】

   大阪市長居障がい者スポーツセンターは、1964年(昭和39年)に開催された東京オリンピック・パラリンピックを契機に、大阪市で検討が進められ、1974年(昭和49年)に日本で初めて設置された障害者専用のスポーツ施設である。サッカーの国際試合等が開催されるヤンマースタジアム長居などを備える「長居公園」内に設置されており、社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会が指定管理を受け管理運営している。
   同センターの利用者の中にはパラリンピックなどの国際大会に出場する選手もおり、選手の育成、指導する職員の育成に注力している。
   同センターを視察し、本県の障害者スポーツの推進に向けた施策の参考とする。

【調査内容】

   大阪市長居障がい者スポーツセンターは、「いつ一人で来館しても指導員や仲間がいて、安心していろいろなスポーツを楽しむことができる」という基本方針のもとで運営されている。障害のある人が、スポーツを通して、体力の維持・増進、身体機能の回復・向上を図るほか、精神的にも自信と勇気を養い、社会参加の機会を増やし、豊かな日常生活を送ることを目的としている。同センターは障害者専用のスポーツ施設で、一般の利用はできない。大阪府内に住む障害者は無料で利用でき、障害の程度により原則1人の介護人の使用料は免除される。
   1964年(昭和39年)の東京オリンピック・パラリンピックの開催を経て、1974年(昭和49年)に同センターが開設された後、家に閉じこもりがちであった障害者のスポーツへの関心が高まり、同センターの利用者数は年々増え続けている。平成25年度には年間延べ利用者数が37万人を超え、今年9月には開設からの延べ利用者数が1,000万人を突破した。同センターの近くには大阪メトロ御堂筋線、JR阪和線が通っており、大阪メトロの長居駅には6台のエレベーターが設置されていることから、障害のある方でも通いやすく、同センターへ電車を利用して来場する方も多い。週末の土曜日や日曜日は団体による予約が多く入るが、同センターの基本方針に基づき、個人利用にも指導員がついて対応しているとのことであった。
   利用者数の増加や「なみはや国体」などの障害者スポーツ大会の開催に合わせて、平成9年に大阪市此花区に宿泊施設を備えた舞洲障がい者スポーツセンターを市内2か所目として開設している。
   概要説明を受けた後、活発な質問が行われた。その中で、「同センターを管理運営している中での課題は何か」との質問に対し、「第一の課題として施設の老朽化がある。大阪市では今年度長居障がい者スポーツセンターのあり方検討に向けた調査等を進めており、有識者や障害者団体、スポーツ団体関係者によりあり方検討会議を開催し、意見を聴取している。第二の課題として障害者スポーツの地域への広がりがある。同センターに来れば障害者が安心してスポーツ等ができるが、市としてはこれがゴールではなく、各地域で障害に関係なくスポーツができることが必要と考えており、障害者スポーツの地域への広がりが課題である」との回答があった。その後、施設内を視察した。同センターには、室内温水プールや車いすバスケットボール等で利用される体育室、エアロバイク等を備えたトレーニング室、ノンガターシステムを備えたボウリング室など多種多様な施設があり、視察当日も多くの方に利用されていた。
   今回の視察は、本県における障害者スポーツの推進を検討していく上で、大変参考となるものであった。

(2) ロート製薬株式会社(グランフロント大阪オフィス)

(企業における健康経営の取組について)

【調査目的】

   ロート製薬株式会社は、健康経営という言葉が社会に広まる以前から、従業員の健康を願い、従業員自らが前向きに健康づくりに取り組めるよう、きっかけづくりなど様々な取組に力を入れてきた。単に病気にならないようになるだけでなく、心身の健康を基盤とし、情熱を持って生き生きと働き活躍する健康人財であふれる会社を目指し、商品やサービスを通じて社会の健康へ波及することも目指している。取組の一環として、平成16年にスマートキャンプという従業員向けの福利厚生施設を設置し、健康食レストラン等を同社で運営し、従業員に限らず一般客にも開放している。
   同社の取組を視察し、本県で推進している健康経営実践企業への支援の施策の参考とする。

【調査内容】

   ロート製薬株式会社は「薬に頼らない製薬会社」を目指し、従業員の健康づくり、健康経営に力を入れている。健康経営とは、企業が従業員の健康に配慮することにより、経営面においても大きな成果が期待できるとの基盤に立ち、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを指す。健康経営、従業員の健康化を進めることにより、企業の生産性の向上、企業ブランドの向上、人材の獲得が可能となる。
   同社では、平成26年に社内にCHO(チーフヘルスオフィサー・最高健康責任者)を設置し、ヘルスケア分野を中心に研究、開発、経営全般について経験と実績をもつジュネジャ・レカ・ラジュ氏を同職に任命し、社内外での健康に関する取組を強化している。
   同社における健康経営の具体的な取組として、生活習慣病健診の年齢引下げなど定期健康診断の進化や社内体力測定会等を実施し、健康に対する従業員の気付きの場面を増やす取組や、バランスボールに座り業務を行うなどの健康増進オフィス化、活動量計を全社員へ配布し、日常生活からの健康づくりを促す取組などを進めている。平成16年からは、スマートキャンプという従業員向けの福利厚生施設を設置し、健康食のレストランやリラクゼーション施設などを同社が直接運営し、従業員に限らず一般客の利用も可能となっている。また、平成31年1月からは、健康社内通貨「ARUCO」(アルコ)を導入し、社員の日々のウォーキングの歩数や早歩き時間、スポーツなど健康的な生活習慣の実施状況に応じて、社内通貨(健康コイン)を付与し、同社の健康食品や健康食レストランの利用や、健康診断での追加の検査、特別休暇などに交換可能な仕組みで運用している。
   さらに、社員の健康から社会の健康へ広げるため、宮城県女川町と連携協定を結び、町民の健康づくりを通じた地域経済の活性化を目指す取組も進めているとのことであった。
   概要説明を受けた後、活発な質問が行われた。その中で、「健康経営の取組を進めていく上で、地元の大阪府等から支援等を受けているのか」との質問に対し、「大阪府と包括連携協定を結び、健康を軸に府内の地元企業と情報共有、連携しながら大阪府が抱える課題解決に取り組んでいる」との回答があった。その後、グランフロント大阪にある同社オフィスや同社が運営する健康食レストラン等を視察した。
   今回の視察は、本県における健康経営推進企業への支援を進める上で、大変参考となるものであった。

(3) 京都大学医学部附属病院

   (がんゲノム医療の取組について)

【調査目的】

   京都大学医学部附属病院は、がんゲノム医療の中心的役割を担う、全国に11院ある「がんゲノム医療中核拠点病院」の一つであり、患者への治療やカウンセリングを行う「がんゲノム医療連携病院」28院とともに、治療情報やゲノムデータを共有する仕組みを構築している。
   埼玉県では、県立がんセンターと県立小児医療センターが、東京大学医学部附属病院を中核拠点病院とするがんゲノム医療連携病院としてがんゲノム医療を提供している。同病院におけるがんゲノム医療に関する研究等を視察し、本県のがんゲノム医療の推進に向けた施策の参考とする。
   ※ 県立がんセンターは、厚生労働省から令和元年9月19日付けでがんゲノム医療中核拠点病院と同等の医療機能を持つ「がんゲノム医療拠点病院」に指定された。

【調査内容】

   京都大学医学部附属病院は、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する医療機関として、がんゲノム検査の実施、患者やその家族に対するカウンセリング、治療法選択の意思決定支援を進めている。
   同病院は、がん医療について、平成19年に国立大学として初めて「がんセンター」を設立し、腫瘍内科がリーダーとなり、診療科や職種を横断したがん医療を実践している。その後、ゲノム医学の発達とICTの進歩により、がん及び個人のゲノム情報を融合し、最善の医療を提供するがんゲノム医療を、「がんゲノム医療中核拠点病院」として連携病院と連携して推し進めている。
   同病院では、平成27年からがんに罹患した患者のがん細胞で生じているがん関連遺伝子の変異を解析する「がんクリニカルシーケンス検査(オンコプライム)」を自由診療で行っている。日常臨床で行われている遺伝子検査は、特定の遺伝子で起こっている一部の変異しか調べられないが、オンコプライムでは200を超えるがん関連遺伝子の変異を一度に調べることができる。この検査は、原発不明がん、希少がんと診断されている患者、標準治療で症状の改善が見られない患者を対象としており、がん患者の治療法を拡げている。
   がんゲノム医療では、症例データや生体試料の蓄積が重要であり、がん医療で蓄積したデータや、同病院の生活習慣病・先制医療研究センターで蓄積された健常者のバイオリソースを、京都大学クリニカルバイオリソースセンターで蓄積し、解析できる体制を整備している。
   また、遺伝子検査では、検査を行ってもがんの診察や治療に有用な情報が得られない場合もある。遺伝子変異の情報が得られ、可能性のある治療薬があり、治療に進むことができるのは受検者の10%程度となる。検査の結果によっては、当初検査しようとしていたものとは別の家族性の乳がん等の遺伝性のがんが判明する場合があるという。検査の結果が患者の新たな不安となってしまうこともあるため、検査により判明した情報を知りたいか確認するなど、患者やその家族に対するカウンセリングが重要となるとのことであった。
   概要説明を受けた後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「現在のがんゲノム医療では治療に進める患者が10%程度とのことだが、将来的な展望はいかがか」との質問に対し、「がんクリニカルシーケンス検査の結果、有効な薬剤が見つかった場合でも、国内未承認の薬剤や臨床研究中の薬剤などがあり、現在低い割合となっている。それらの使用が認められてくれば、3割から4割程度の患者について治療が進められるのではないかと思っている」との回答があった。
   今回、視察先を調査できたことは、がんゲノム医療を推進している本県にとって、大変参考となるものであった。

福保_京都大学医学部附属病院にて 

京都大学医学部附属病院にて

(4) 株式会社島津製作所ヘルスケアR&Dセンター

   (先進的ヘルスケア事業の研究・開発について)

【調査目的】

   株式会社島津製作所は、研究機関や大学等との共同研究を通じて、同社の主要事業である計測技術と医用技術を融合し、予防・診断・治療・予後管理の幅広い分野で革新的な製品やサービスを創出する「アドバンスト・ヘルスケア」に取り組んでいる。
   ヘルスケア分野、医療分野の研究開発拠点となる「ヘルスケアR&Dセンター」を今年6月に本社三条工場内に開設し、技術開発の促進、早期事業化を目指している。
   同社の研究やサービス開発の取組を視察することで、本県におけるヘルスケア分野の事業者支援や地域医療との連携に関する施策の参考とする。

 【調査内容】

   株式会社島津製作所では、ライフサイエンスの研究開発部門を集約し、オープンイノベーションの拠点として様々な共同研究を推進するため、本社三条工場内に「ヘルスケアR&Dセンター」を開設した。地上4階建て、延べ床面積19,300平方メートルの同センターへの投資額は約93億円で、外部の技術を自社の開発に生かすオープンイノベーションを促進するため、展示エリアと実験室エリアを有し、新たな技術的価値を探る「協創ラボ」や大学、他社と共同して研究することができる「協働ラボ」を設けている。センター内には、平成14年に質量分析技術の開発でノーベル化学賞を受賞した同社の田中耕一シニアフェローの研究室も入る。同社による「アドバンスト・ヘルスケア」の取組を通じて、成長が見込まれ、市場が拡大しているヘルスケア分野に注力し、主力の分析計測技術や医療用画像診断技術との融合や応用を進めている。
   同社では、ヘルスケア分野での調査分析手法を開発しており、その一つとしてアルツハイマー病の原因物質の調査手法がある。アルツハイマー病の原因物質であるタンパク質「アミロイドβ」が、同病発症し日常生活に影響が出始める20~30年前に脳内に溜まりはじめ、脳細胞を死滅させると考えられている。その中で、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)と同社は、微量の血液を採取し、血液中のアミロイドを分離・回収し、アミロイドの種類や量を測定することで、脳内に蓄積されているか否かが分かる調査手法を確立した。従来はPETや脳せき髄液の検査によっていたが、費用が高いことや手術による侵襲があるため、この原因物質の調査分析が進んでいなかった。今後は、同物質の脳内蓄積がある方を発症前に発見し、治験者となってもらうことで、治療薬の開発や潜在的なアルツハイマー患者の早期発見に活用が見込まれている。
   また、同社と神戸大学は、極微量の成分を検出する同社の質量分析計を使用し、血液の血しょう中の代謝物を高精度に分析する手法を確立した。国立がん研究センターが保管する大量の検体の分析から、大腸がんの診断に利用できるアミノ酸や脂肪酸など8種類の代謝物を発見し、ステージ0や1の早期大腸がんも高感度で検出できるスクリーニング法を開発した。平成30年10月から京都市の病院で試験的に導入を始めており、今年中に検査サービスを開始し、全国展開を目指しているとのことであった。
   地方自治体との協働にも積極的に取り組んでおり、地元の京都府とは「イノベーション都市創造」をテーマに包括連携協定を締結し、脳機能解析技術の研究開発などを進めている。また、山口県、山口市、山口大学とは健康づくり等をテーマとした技術連携を結び、健康寿命の延伸に向けた取組やヘルスケア関連産業の振興の展開に向けた取組を進めている。
   今回、視察先を調査できたことは、本県におけるヘルスケア分野の事業者支援や地域医療との連携を推進していく上で大変参考となるものであった。

福保_株式会社島津製作所にて

株式会社島津製作所ヘルスケアR&Dセンターにて

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