産業労働企業委員会視察報告
調査日
令和8年5月25日(月曜日)~26日(火曜日)
調査先
(1)佐賀県工業技術センター・佐賀大学<佐賀県コスメティック構想>(佐賀市)
(2)スノーピークグラウンズ吉野ヶ里(神埼市)
調査の概要
(1)佐賀県工業技術センター・佐賀大学<佐賀県コスメティック構想>
(重点産業分野の支援について)
【調査目的】
■本県の課題
- 国内市場の縮小や人手不足が深刻化する中、本県の優位性を生かす産業を支援し、税収や雇用効果が高く、地域に波及効果が見込まれる企業の集積を目指す必要がある。
■視察先の概要と特色
- 佐賀県では「コスメ産業」を重点産業と位置付け、日本で唯一の「コスメ産業専門部署」を立ち上げるとともに、佐賀県工業技術センター等の技術支援を通じて、地域資源を活用した産業としてコスメ産業を推進している。
- 原料商社、製造・検査企業、パッケージメーカー、物流などコスメ関連企業が集積する「唐津コスメパーク」があるほか、大手からベンチャーまで幅広い企業が立地するなど産業集積に関する取組も進めている。
- 連携する佐賀大学では、本年、国公立大初の学部横断型の化粧品科学教育プログラム「コスメティックサイエンス学環」を新設するなど、研究者育成や素材研究を支援している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同県では、平成25年より「コスメティック構想」を掲げ、県北部地域を中心に化粧品産業の集積化を推進した。産学官連携組織であるJCC(ジャパン・コスメティックセンター)の設立を契機に、企業・大学・行政が一体となって取組を進めている。
- 佐賀県工業技術センターでは、従来の食品分野における機能性研究に加え、平成30年より化粧品分野の研究を開始した。農林水産物の従来廃棄されていた素材を活用したコスメの開発を進めており、耕作放棄地の活用などの地域課題の解決と、地域資源を活用した産業振興を両立する取組を推進している。
- 佐賀大学では、本年、「コスメティックサイエンス学環」が発足した。企業と学生が共同研究を行うことで、地域の化粧品産業を支える専門人材の育成が進んでおり、研究開発と教育の両面で体制強化が図られている。
- コスメ業界と異業種の交流を促進する「コスメビジネスコミュニティ」を毎月開催し、県内外から多くの参加者が集まっている。また、余剰在庫の化粧品をひとり親家庭などに提供するコスメバンク活動や、障がい者施設との協働による作業支援など、社会貢献活動も積極的に展開している。
■質疑応答
Q:コスメ産業振興の地域メリットは何か。
A:地元企業がコスメ製造に関わることでサプライチェーンが構築され、発注が地域内で循環する効果が期待される。旅館のオリジナルアメニティや農産物加工品など、地域産業との連携も進み、地域経済の活性化につながっている。
Q:学生の県外流出や就職先不足への対応はどうか。
A:大学進学後の就職先不足は大きな課題であると認識している。コスメ関連企業の誘致や協業の促進により、地域内に新たな雇用機会を創出し、佐賀大学等と連携しながら若者が地元で働ける環境づくりを進めている。
Q:情報発信にはどのように取り組んでいるのか。
A:InstagramなどのSNSを積極的に活用しているほか、地域の取組に関心を持ったインフルエンサーが自主的に取材・発信していただくケースが多くある。地域の努力が評価され、自然発生的に広報効果が生まれている。

佐賀県工業技術センターにて
(2)スノーピークグラウンズ吉野ヶ里
(官民連携による観光政策の推進について)
【調査目的】
■本県の課題
- 予算が限られる中、既存の観光資源の魅力を更に高めるため、民間を活用した観光政策の推進が求められている。
■視察先の概要と特色
- 吉野ヶ里歴史公園は、修学旅行などの観光客が多く訪れる一方で、滞在時間が短く、春と秋に利用者が集中しているほか、飲食店が少ないといった課題があった。
- 令和3年に官民連携検討会を設置し、民間企業へのサウンディング調査を実施したところ、民間側から積極的な提案意欲が確認されたことから、官民連携(Park-PFI)による手法で、既存の観光施設に新たな人の流れを作るためのハード面の整備やソフト面の取組などを推進する「吉野ヶ里歴史公園官民連携プロジェクト」を推進した。
- 令和5年に株式会社スノーピークが代表企業として選定され、キャンプ場や宿泊施設、飲食・物販・ライブラリーなどを整備した同施設が令和8年3月に開業、翌月には宿泊施設もオープンした。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 今回整備した同公園の西口エリアは、自動販売機があるのみであったため、利用者からは飲食サービスを求める声が多かった。また、地元からは、利用者の滞在時間が短く地域への効果が小さいとの声もあった。
- 県は、「遊び・学び・泊まる」をテーマに公園の価値向上と地域周遊を促すため、県内で初めてPark-PFI事業を導入し、財政部門を中心に、庁内の複数部局でプロジェクトを推進した。
- 令和8年3月に開業した「スノーピークグラウンズ吉野ヶ里」では、スターバックスや地鶏を扱うレストランのほか、160区画からなる九州最大級のキャンプサイトや弥生時代の建物をモチーフにしたコテージ・キャビンを整備した。また、歴史を学べるライブラリや地場製品、工芸品を常設販売するショップを設置するなど、単なるキャンプ場ではなく、佐賀の魅力を体験・発信する拠点として設計された。
- 県と地元の神埼市、吉野ヶ里町で協議会を設置し、国内外に向けて共同プロモーションを実施している。また、国の交付金も活用しながら、地元産品(神埼そうめんやジビエ)とのコラボイベントや、公園外も含めた地域周遊の促進などのソフト事業を展開している。
■質疑応答
Q:Park-PFIの公募状況はどうだったのか。
A:説明会には数者参加しており、複数者の応募を期待していたが、最終的に手を挙げたのは1者のみだった。公園の規模が大きく、単なるカフェ運営ではなく複合的なサービス提供が求められたことが影響したと考えられる。
Q:この施設が地域にもたらす効果をどう見込んでいるのか。
A:吉野ヶ里周辺はこれまで宿泊施設が少なかった。コテージなどは、週末を中心に半年先までほぼ予約が埋っており、年間3~4万人の宿泊客が新たに生まれる見込みである。近隣の飲食・温泉利用などで地域に消費を落とすなど、観光消費額の底上げが期待されている。