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掲載日:2023年5月23日

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文教委員会視察報告

期日

平成27年8月24日(月)~26日(水)

調査先

 (1) 北九州市立松本清張記念館(北九州市)
 (2) 佐賀県教育委員会(佐賀市)
 (3) 伊万里市立黒川小学校(伊万里市)
 (4) 国立大学法人九州大学(福岡市)

調査の概要

(1)北九州市立松本清張記念館

(文化施設の活性化について)

【調査目的】

北九州市立松本清張記念館は、松本清張の故郷である小倉北区に建設された特定個人の記念館であるが、北九州市が事業主体であり管理運営を行っている。
当館では「友の会」を設立し、講演会、上映会、読書会及び文芸講座など様々な事業を積極的に開催し、開館から11年で累計入場者数100万人を達成した。
同館を視察することにより、本県の文化施設の運営についての参考とする。

【調査内容】

松本清張記念館は、社会派推理小説をはじめ、歴史小説、古代史、現代史など様々なジャンルにわたって創作活動を続けた清張の偉大な業績を称え、後世にその業績を継承していくことを目的として、遺族の全面的な協力を得て建設されたものである。同館は、総工費約25億円をかけて、清張の7回忌にあたる平成10年8月4日に開館し、延床面積約3,391㎡を有し、北九州市がいわゆる直営で管理運営を行っている。累計入館者数は100万人を超え、ここ3年においても年平均約5万人の入館者を得ている。
同館のコンセプトは5つあり、①清張の全貌を紹介、②清張とその時代の研究、③あらゆる清張情報の発信、④市民の文芸活動の支援、⑤文化・観光ゾーンの形成、となっている。
館内は、清張が生きた時代と作品の時代背景を映像やグラフィックで紹介する展示室1、清張が過ごした東京都杉並区高井戸の自宅の外観をはじめ、遺族から寄贈を受け、書斎や書庫・応接間を清張が亡くなった当時の状態で忠実に再現した展示室2、代表作を上映する劇場、その他特別企画展を行う企画展示室、読書室、情報ライブラリー、ミュージアムショップ等で構成されており、来訪者は清張及び彼の生きた時代を分かりやすく学ぶことができるようになっている。 
事業も多岐にわたっており、「普及事業」として特別企画展をはじめ、各種講演会や中高生を対象とした清張作品読書感想文コンクールの開催、「研究センター事業」として清張の作品及び人物像を研究し継承するために120万円を上限に奨励金を給付する研究奨励事業や、全国の第一線研究者を網羅し更なる研究の推進と後継者の育成を目指した研究誌の発行等、広く深い事業を展開している。
中でも、記念館事業に関心のある方々の知識や理解を一層推進し、相互交流によって親睦を図るとともに、記念館活動を支援する目的で平成12年11月に設立された「友の会」が大きな役割を果たしている。平成26年度現在の会員数は462名を数え、読書会や講座の開催、他都市文学館見学、講演会やシンポジウム、上映会の開催、会報の発行など友の会としても積極的な事業を展開し、記念館とともに車の両輪として記念館の運営を支えている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「集客への取組や、若年層の読書離れと言われる中、市としてどのような文学に触れるための取組を行っているのか」との質問に対し、「開設当初から比較すると入館者数が落ち込んでいるが、盛り返しつつある。そこで、近隣の小倉城等観光施設と連携し、魅力向上検討委員会を立ち上げ『文学のまち』をアピールして集客を狙う。さらに、市教育委員会においては子供読書推進検討委員会を立ち上げ、動き出したところである」との説明があった。
今回視察先を調査できたことは、本県における文化施設活性化の取組を充実させるために大変参考となるものであった。

(2)佐賀県教育委員会

(先進的な教育施策の取組について)

【調査目的】

佐賀県では、今日の高度情報化、グローバル化が急速に進展する社会で必須となるコミュニケーション能力や情報活用能力等の育成のため、ICTを利活用した教育の充実に力を入れている。発達段階に応じた、また、学校種や教科特性に応じた児童生徒の主体的な学びを創造し、教育の質の向上に資するために先進的ICT利活用教育推進事業を実施している。
同県では平成23年度から、教育情報システムやICT機器等の機能強化、デジタル教材の確保等に一体的に取り組み、県の最重要施策に位置付け、全県規模で教育の情報化の推進に取り組んでいる。
当該取組を調査することにより、本県でモデル事業として検討を始めている特別支援学校におけるICT活用等の先進的な教育施策の参考とする。

【調査内容】

佐賀県における「教育の情報化推進」の発端は、平成19年に全国学力学習調査が43年ぶりに再開され、その結果多くの課題が浮き彫りになったことである。
この課題とは、次世代を見据えた教育の実現、国における教育改革の動き、OECDが行っているPISA調査等であり、これらについて県としてどのように対応していくべきか、また、新型インフルエンザ発生時、自然災害発生時、不登校や特別支援教育対象者の増加などに対してもどうやって教育を維持していくか、さらには学力向上のために県としてどのように取り組むべきか、というものであった。
そこで、現行の学習指導要領で示されている基礎的な知識・技能の徹底、その知識を活用して自ら考え判断し表現する力を育む、学習に取り組む意欲を養うといったものに加え、①高度情報化・グローバル化社会への対応(理数教育、ICT教育の推進、語学教育、海外留学体験の促進)、②生涯教育の基礎となる学習習慣の育成(知識注入型教育からの転換)、③自己の確立・アイデンティティーの育成(郷土を、そして日本を知り、世界を知る)を三本の柱として取り組んでいる。
これまで我が国は教育において三回の大きな転換期があった。最初は明治5年の近代日本の教育制度の確立、二回目は昭和22年の戦後日本教育への移行、そして、三回目は平成18年の改正教育基本法の公布である。平成18年、安倍内閣におけるこの改革の中に、「ICT活用による新たな学びの推進」が明示された。
これを受け、同県では平成20年度に佐賀県ICT推進本部の設置を皮切りに、平成23年度には同県総合計画2011において“進”重点項目に位置付け、「先進的ICT利活用教育推進事業」として本格実施した。
そして、平成24年度には、これまで取り組んできた実証研究の成果を踏まえながら、未整備の県立中学校と県立特別支援学校全ての普通教室に電子黒板と校内無線LANの整備と、生徒一人一人に学習用端末の整備を完了した。
こうした中、教師がICTを利活用できなければ意味がないことから、教師に対する研修にも力を入れている。現在のICT利活用についての文科省教員意識調査では、同県は95%の教師が「活用し指導できる」と回答、全国第一位となっている。ICT機器の使用方法については、学校長から委嘱を受けた教師がリーダーとなり集合研修に参加し、その内容を各学校で全職員に指導することとしている。
ICTを利活用した教育は、機器の不調等によるトラブルも発生しているものの、教科書のみを使用するより、生徒への伝わりという面で大変効果的であり、児童生徒の興味・関心が高まり、思考や理解を深め、教授内容・課題が的確に伝わるので、児童生徒は「分かった、できた」と実感できるとのことである。
課題としては、新たな教授法の確立、経験不足による不安の解消、費用や著作権の取扱を原因とする教材の確保が挙げられている。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「ICT利活用による学力の向上の結果はどうか」との質問に対し、「テストの点数としての結果は判断材料とせず、将来、児童生徒が社会に出たときにどう活躍できるか、という視点で考えている」との説明があった。
今回視察先を調査できたことは、本県におけるICTを利活用した教育の取組を充実させるために大変参考となるものであった。

(3)伊万里市立黒川小学校

(学校図書館の特色ある取組について)

【調査目的】

平成18年、伊万里市では「いじめなし都市宣言」を行った。これを受けて心の居場所としての家庭づくりへの政策的な取組への欲求が高まり、平成19年度から親子の心をつなぐ「家読(うちどく)のすすめ」事業が実施された。
そこで市内の黒川町がモデル地区に指定され、公民館、幼稚園、小学校、ボランティア等による家読連絡会が発足した。黒川小学校では地域ぐるみの連携協調のもと、図書室を居心地が良く本を借りたくなる工夫をしてリニューアルしたことによって、一人当たりの貸出し数や、家読実施数をいずれも飛躍的に伸ばしている。さらに、学年に応じた企画を展開するなど取り組んだ結果、平成26年には文部科学大臣表彰を受けた。
同小学校を視察することにより、本県の学校図書室の利用活性化の参考とする。

【調査内容】

2712文教委員会視察報告(1)

伊万里市立黒川小学校にて

現在の鴻上哲也校長は3年前に同校に赴任した。しかし、「家読の郷黒川町」の拠点とも言うべき同校の図書館を精査したところ、施設的魅力の欠如、貸出冊数の低迷、学習資料の不足、支援体制の弱さ、専門性と労力の不足等、様々な問題点が浮き彫りになったことから、平成25年5月に図書館のリニューアル計画を策定した。
まず、問題解決の方向性と具体策として、①児童の読書意欲を喚起、②学習支援機能の強化、③地域・保護者等との連携の促進という大きな3つの柱を立て、それぞれ具体的な方策を打ち出した。
各方策として、①読書意欲を喚起するため、図書室へ入りたくなるようなアプローチの整備、本を探しやすくするように書架配架の工夫、掲示物やポップの作成、楽しみながら読書に取り組めるような事業の企画、長時間滞在しても疲れない机及び椅子の工夫、貸出ルールの見直し、②学習支援機能の強化のため、学習コーナーを設置し資料や書籍の計画的購入、参考書や問題集の配備、放課後学習や長期休業中の自主学習の場としての活用、③地域・保護者等との連携促進のため、保護者、おはなしどんぐり(地域の読み語りグループ)や育友会(PTA)、市民図書館職員、家読連絡協議会等との協力関係の構築等を掲げ、学校図書館リニューアル計画に着手した。
鴻上校長からの概要説明の中で、リニューアルの経過を記録したDVDが上映された。特筆すべきことは、保護者と職員を中心に「地域を巻き込んだ手作りの整備」が挙げられる。父親委員会、母親委員会、広報委員会、生活指導委員会等各種委員会を立ち上げ、図書館はもとより校長室を作業場として開放した。父親委員会においては、図書館へのアプローチ整備をはじめ、地元の桜の木を用いた看板の作成、すのこを活用した掲示板やブックスタンド等の作成を行い、また、母親委員会においては、無機質な椅子にカバーを取り付け、脚にテニスボールを用いたかわいらしいアレンジをほどこし、本の見出し作成や部屋の装飾を全員一丸となって行うなど、熱心な活動があった。
約4か月にわたる正に手作りの整備の結果、平成25年9月9日にリニューアルオープンした。実際に訪れた図書館は、明るく開放的な中、趣向を凝らした装飾や書架の配置がなされていた。また、段ボールハウスが設置されるなど、遊びの要素も散りばめられており、大変魅力的な図書館であった。
図書館リニューアルの成果としては、一人当たりの貸出冊数が75冊から168冊に大幅に増加したほか、学力調査結果の向上、語彙の増加、生徒指導上の問題行動の減少等、読書による直接・間接の成果が随所に表れているとのことであった。
概要説明の後、委員から活発な質疑と意見交換が行われたが、「鴻上校長をはじめとする関係の皆様方の努力と成果に感動を覚えた」との意見で締めくくられた。
今回視察先を調査できたことは、本県における学校図書室利用活性化の取組を充実させるために大変参考となるものであった。

(4)国立大学法人九州大学

(教育委員会と大学が連携した教員研修の開発について)

【調査目的】

福岡県では、県教育委員会と九州大学が連携し、変化の激しい教育環境の中、理論と実践の往還を通して、学校が直面する様々な問題を冷静に分析し、行政的・制度的条件を踏まえつつ問題解決に向けて学校の教育活動の組織化をリードし、学校の課題に対応したカリキュラム開発や人材育成の在り方を考え実践できる高度な専門性と能力の育成を目標とした研修プログラムを開発している。
同大学を視察することにより、本県において実践している大学との連携を、更に効果的に活用するための手法を学び、参考とする。

【調査内容】

2712文教委員会視察報告(2)

 国立大学法人九州大学にて

当日は、九州大学における教育委員会と大学が連携した教員研修の開発、中でも「学校管理職マネジメント短期研修プログラム」について、資料に基づき詳細な説明を受けた。
同大学と同県教育委員会は、平成14年5月に「連携・協力に関する協定書」を締結した。平成17年に両者の間で研修の具体的な話が持ち上がり、平成18年3月に同大学教育学部と同県教育センターは学生教育、教員研修、調査研究などに双方が資源を提供し、活性化を図ることで教育の充実・発展に資することを目的とした「連携に関する協定書」を締結した。さらに、現在教育学部では、同県教育委員会のほか、福岡市教育委員会、北九州市教育委員会とも連携・協働を図っている。

なお、研修の具体的な話が持ち上がった平成17年は、教育基本法や学校教育法改正をはじめ、これまでの学校教育の在り方のドラスティックな変化が議論されはじめた時期であった。そこで、同大学においても文理融合型組織である人間環境学府が発足して5年を経たことから、学校教育の変化をにらんで「大学としてできること、大学だからできること」を考え、教員研修の実施に乗り出したという事である。
第1回目の研修は平成18年に行われ、受講生の声を反映させながらカリキュラムの大枠を確立した。そして、様々な教育改革が進められる中、幅広い知識やスキルを有した次世代リーダーの育成を掲げて歩みを重ね、今般10周年を迎えた。
この間、日本教育経営学会から校長の専門職基準が示され、校長には「学校の経営ビジョンの形成と具現化」「教育活動の質を高めるための協力体制と風土づくり」「教職員の職務開発を支える協力体制と風土づくり」といった教育委員会と大学が連携した教員研修の開発を可能とする力量が必要とされたことを踏まえ、現在では「管理職の力量形成をしていく中で、教育活動の組織化をリードし、結果としてあらゆる児童生徒の教育活動の質的改善を行うことができるリーダー育成」を目的として研修を組み立てている。
研修は7月末から8月初旬の5日間開催している。対象は次世代のリーダーである同県内の副校長、教頭、教諭とし、受講料は10,400円(自己負担)となっている。
本研修の独自性は、①受講生自らがカリキュラムを作成するため、現場の要望に応えるものであること、②講師は同大学の人間環境学府の教員及びそのネットワークから様々な分野で活躍する講師を招へいできること、③講師、受講生、スタッフを含めた交流時間を多く設け、より関係を密にすることによる自由かったつな意見交換とネットワークの構築を可能としていることが挙げられる。
こうした取組の成果は、受講生のマネジメント能力の向上、受講生のキャリアアップ、学校改善、大学の社会貢献等として表れており、受講者からの満足度も極めて高く毎年定員を大幅に超える希望者があるという。
概要説明の後、委員からは活発な質疑が行われた。「九州大学が開発した本研修はどのような影響を与えているのか」との質問に対し、「単純計算でこれまで600人の受講者を出しているが、福岡県の学校規模を考えるとまだまだ少ないと考える。しかし、本研修を参考にして地方自治体が新たな研修を企画している。また、ある地方自治体教育委員会では、本研修を受講することによって新任校長研修を免除している。中には小中学校の先生が研修をきっかけに大学院に入学する事例もあるなど、マネジメントという考え方が県内で拡がっている手応えを感じている」との説明があった。
今回視察先を調査できたことは、本県における教育委員会と大学が連携を充実させるために大変参考となるものであった。

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