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掲載日:2019年12月9日

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 警察危機管理防災委員会視察報告

期日

令和元年8月26日(月曜日)~28日(水曜日)

調査先

   (1) 岩手県警察本部(盛岡市)
   (2) 釜石鵜住居復興スタジアム(釜石市)
   (3) 大槌町役場(岩手県大槌町)
   (4) 双葉警察署浪江分庁舎(福島県浪江町)

調査の概要

(1) 岩手県警察本部

(高齢運転者に対する運転指導について)

【調査目的】

   昨今、高齢運転者による重大な事故が日本各地で発生しており、本県においても対策が課題となっている。
   岩手県警察本部及び管内各警察署(以下「警察本部等」という。)では、ドライブレコーダーを用いた実際の運転映像により運転の傾向等を分析し、高齢運転者の運転指導を行っている。具体的には、警察本部等が高齢運転者にドライブレコーダーを貸し出し、実際の運転を撮影して、その映像により運転者の癖や危険運転の傾向等を分析するなどして運転指導を行っている。
   当該取組を調査することにより、本県における高齢運転者への運転指導の取組の参考とする。

【調査内容】

   岩手県民は余り公共交通機関を使わず、自家用車を利用する傾向がある。また、人口10万人当たりの事故件数は75.1件(全国43位)であるが、人口10万人当たりの死者数は1.77人(全国12位)となっており、交通事故の件数は少ないが交通事故に占める死亡事故の割合が高いことが特徴となっている。また、事故認知速度(自動車の運転中、危険を認知した時点での速度)も全国ワーストクラスとなっている。
   同県では、高齢運転者による交通事故の約4割が、信号無視、一時不停止、安全不確認等の重大事故に直結する違反が原因となっているが、多くが違反行為を明確に認識していなかった。そこで、ドライブレコーダーにより録画した自らの運転映像を確認することにより、加齢に伴う反応時間の遅れや注意力の低下等、自分自身では気付きにくい身体機能の変化に伴う危険な運転行為や運転癖について客観的に認識及び理解をさせて、それらを警察官の指導により是正させる目的で、平成28年9月から「ドライブレコーダー活用による高齢者安全教育」を行っている。
   今回の視察では、実際にドライブレコーダーで撮られた映像を見ながら警察官による説明を受けた。複数件の映像で共通した事項は、日々使用している道路ほど慣れが生じて安全確認がおろそかになる傾向があるということである。また、雪の積もった道では、一時停止の標識はあるものの停止線が雪により見えないこともあり、一時不停止となるケースなどがあった。
   このほか、高齢者の交通事故防止対策として「動画KYT(危険予測トレーニング)機材を活用した安全教育」も行っている。これは、運転中の車外風景を再現した映像を見ながら受講者が危険箇所でリモコンのボタンを押下することにより、映像終了後に各受講者がどのタイミングでボタンを押下したかが示されて、意見を聞いたり、警察官による危険箇所の説明等を行うものである。
   概要説明後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「高齢運転者に対する運転指導では、運転免許証の返納勧奨などをどこまで結び付けるのか」との質問に対し、「岩手県は地域の状況から自家用車に依存せざるを得ない状況であるため、なかなか返納勧奨は難しいが、家族の支援を得ながら運転指導を行っているところである」との回答があった。
   今回視察先を調査できたことは、本県における高齢運転者に対する運転指導に大変参考となるものであった。

警危_岩手県警察本部にて 

岩手県警察本部にて

(2) 釜石鵜住居復興スタジアム

(災害時における避難所等の運営について)

【調査目的】

   本県においては、大規模地震等が発生した場合における帰宅困難者及び避難者への対応等が課題となっている。
   釜石市においては、東日本大震災で鵜住居地区にある旧鵜住居小学校・釜石東中学校が津波による甚大な被害を受けたが、両校の生徒は迅速な避難行動により難を逃れた。釜石鵜住居復興スタジアムは、両校の跡地に建設され、「震災の記憶と防災の知恵」を次世代に伝えるとともに、災害時には耐震性貯水槽貯留槽等を備えた緊急避難場所になる。
   同スタジアム及び避難所の運営に関して調査することにより、本県における帰宅困難者及び避難者への対応等への参考とする。

【調査内容】

   釜石市は、令和元年にアジアで初開催されるラグビーワールドカップ2019TM日本大会の復興のシンボルとして、そして将来を担う子供たちに夢と希望と勇気を与えるため、開催都市に立候補し、平成27年3月に開催都市に選ばれた。国内12の開催都市の中で唯一スタジアム会場を持たなかった同市は、東日本大震災からの復興を目指して「釜石鵜住居復興スタジアム」を整備した。
   同スタジアムは、敷地面積約90,000平方メートル、収容人数6,000席(大会開催時約16,000席)、メイングラウンド面積約11,000平方メートル、整備事業費48億7,800万円となっており、メイングラウンドには、同スタジアムが日本初導入となった、優れた耐久性と衝撃吸収性のほかメンテナンス性にも優れる床土改良型のハイブリッド天然芝を採用している。また、施設には木材が多く使用されている。これは、平成29年5月に発生した尾崎半島山林火災の被害木(スギ約800本)を活用しているためであり、木製シート、ベンチ及びトイレ棟等に使用されている。今大会では、令和元年9月25日にフィジー対ウルグアイ、同年10月13日にナミビア対カナダの試合が予定されている。
   避難所関係についてであるが、国内の観光客は当然のことながら釜石市を訪れる外国人も同スタジアムがかつて津波の被害を受けた場所であるということを認識しているため、同市では安心して観戦ができる取組を優先課題とした。同スタジアムは5m嵩上げして建設しており、更には海側には防潮堤を新設しているため東日本大震災クラスの津波だと浸水しないが、想定以上の津波が来る可能性もあるので、それに備えた対策を講じている。具体的には、試合観戦中に津波等が発生した場合などの有事の際にどこに逃げればよいのかということを、道路の幅や高さ、障害物等を考慮してコンピュータシミュレーションしており、その結果、高台と山側の二手に分かれて避難することとしている。また、足の不自由な方やケガをした方などのために裏山に緊急避難場所を2か所設置している。さらに、同スタジアムには100tの耐震性貯水槽(飲料水)と120tの耐震性貯留槽(汚水処理等)がそれぞれ1基ずつ整備されており、避難所施設として運営できるようにしているとのことであった。
   概要説明後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「有事の際二手に分かれて避難するとのことだが、具体的にはどこに避難するのか」との質問に対し、「小中学校のある高台と恋ノ峠側の高台の2か所である」との回答があった。
   今回視察先を調査できたことは、本県における災害時における避難所等の運営に大変参考となるものであった。

(3) 大槌町役場

   (大規模災害への備えについて)

【調査目的】

   本県においては、大規模災害への備え及び広域災害等への対応力の強化が課題となっている。
   東日本大震災では多くの自治体が被災したが、大槌町は当時の町役場が津波に襲われるなど甚大な被害を受けた。同町は被災後、復旧・復興事業を進めており、8年後となる令和元年度にほぼ完了する予定である。
   被災時の状況や復旧・復興事業を進めていく過程での教訓及び課題等について調査し、本県における防災事業の推進及び広域災害への対応力強化の参考とする。

【調査内容】

   大槌町は岩手県の海岸線の中央から少し南に位置しており、面積は200.42km2、人口は11,745人(令和元年6月30日現在)である。産業構造は就業人口ベースで、第一次産業が6.2%、第二次産業が38.7%、第三次産業が53.8%となっている(平成27年国勢調査による)。近年、第二次産業の割合が増加しているが、これは復興事業の本格化により建設業の就業人口が増加したためと考えられている。また、町の財政については、財政健全化比率を見ると健全な範囲ではあるが、財政力指数が0.27と岩手県平均の0.35を下回っており、財政基盤が脆弱であることを示している(数値は平成29年度決算数値による)。
   平成23年3月11日、三陸沖を震源とした東日本大震災による大津波が同町を襲い、津波浸水面積は4km2に及んだ。これにより死者・行方不明者(震災関連死を含む)は町の人口の約8.0%に当たる1,286人に上り、また、被害額は産業関連施設と公共施設合わせて約796億円に上った。当時の町役場にも津波が襲い、町職員約140名のうち、当時の町長を含む40人が犠牲となったとのことであった。
   今回の視察では、平野公三町長から概要説明を受けた。同町の防災は「多重防災」という考え方に基づいている。14.5mの防潮堤を造り、その後ろの土地を危険区域に指定して、それ以外を盛土する。そこに避難路を造り、加えて防災に対する知識、経験を踏まえた防災教育を行っていくという、ハード面とソフト面の両方における多重な防災を作っていく取組を行っている。また、被災直後は町職員が約100人であるのに対して、約200人の派遣職員が応援に来たが、町職員は「派遣職員は何かやってくれるだろう」と思っていた一方、派遣職員は「何をやったらよいのか」という思いであり、双方にギャップが生じていた。そのため、町の立場からすると、現場に意見できる職員を派遣してほしい。また、有事の際は電話で状況は説明できないので、県は現場に来て感じたことを基に県として動ける状況を作っておく必要がある。すなわち、情報を吸い上げるのではなく取りに行く行動がなければならないとの心構えについて説明を受けた。
   概要説明後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「国や県に対して、最優先で支援してほしいものは何か」との質問に対し、「交付金が人口を基準に交付されているが、大槌町は例外的に震災前の人口を基準として交付されている。今後は段階的に減少となっていくが、国や県には例外的措置を継続するよう要望していく」との回答があった。その後、城山公園にて現地視察を行い、町を一望しながら平野町長から説明を受けた。
   今回視察先を調査できたことは、本県における大規模災害への備えに大変参考となるものであった。

警危_大槌町役場にて

大槌町役場にて

(4) 双葉警察署浪江分庁舎

   (災害時における県民の安心・安全の確保について)

【調査目的】

   本県においては、大規模災害が発生した場合、県民の安心・安全を確実に守ることが課題となっている。
   浪江町は、東日本大震災による福島第一原子力発電事故により、町内全域に避難指示が出ていたが、平成29年3月31日に一部地域の避難指示が解除された。
   双葉警察署浪江分庁舎には埼玉県警察からの特別出向者が勤務しており、災害関係に関する警察活動等を行っている。
   被災時と現在の同町の状況や、特別出向者の体験を調査することで、本県における県民の安心・安全の確保についての参考とする。

 【調査内容】

   浪江町は福島県の浜通り(沿岸部)の北部に位置しており、面積は223.14km2、人口は住民登録数17,330人、居住者1,095人(ともに令和元年7月31日現在)である。町の財政については、財政健全化比率を見ると健全な範囲であり、財政力指数も0.45と福島県平均の0.46と同等となっている(数値は平成29年度決算数値による)。
   東日本大震災では震度6強の揺れや15mを超える津波が襲い、6km2が浸水、全壊家屋651戸、死者182人に上った。福島第一原子力発電所の事故により、町全域21,000人を超える町民が避難対象となり、避難生活を余儀なくされたが、平成29年3月31日に「帰還困難区域」を除く区域で避難指示が解除された。実際の居住者は約1,100人であり、そのほかの町民は現在も町外での避難生活を続けている。平成30年10月に実施した住民意向調査では、「帰還したいと考えている」が11.8%、「まだ判断がつかない」が30.2%、「帰還しないと決めている」が49.9%となっており、また、帰還していない町民に話を聞いてみると「帰還しても仕事がない」、「避難先で生活基盤ができている」という意見もあり、なかなか住民の帰還が進んでいない状況である。しかしながら、本年度には町内に大手のスーパーマーケットが開店するなど、復興に向けて着実に前進はしている。
   埼玉県警察からの特別出向者が所属している特別警ら隊は、平成24年2月1日に東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故における治安維持を担当するために設立された。全国からの特別出向者を中心に今年度は51名で組織され、地元住民が他の都道府県からの特別出向者に親しみを込めて接することができるように、通称「ウルトラ警察隊」と命名されている。業務として、避難指示区域等における警ら用無線自動車の機動力を生かした警戒警ら活動、原子力発電所外周の警戒、コンビニエンスストアや金融機関への立ち寄り、不審者等に対する職務質問、交通違反者に対する指導取締り、帰還困難区域等の巡回(ウルトラパトロール)を行っている。
   概要説明後、委員からは活発な質疑が行われた。その中で、「管轄する地域が広大であるのに対し、51人という体制は少ないように感じるがどうか」との質問に対し、「当該地域は浪江分庁舎だけで警戒警らをしているものではなく、警察本部の警備隊や復興支援係と連携している」との回答があった。また、特別出向者から、地域住民の困りごととして「若い人が帰還しない」という意見を受けているため、治安面から貢献できるようにしたいとの説明があった。その後、神尾髙善議長から特別出向者に対して感謝の意を表した。
   今回視察先を調査できたことは、本県における災害時における県民の安心・安全の確保に大変参考となるものであった。

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郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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