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掲載日:2026年10月27日
この記事はニュースレター第73号(令和8年10月発行)に掲載したものです。
赤道や北極の大気や海洋の現象が埼玉県の天候に影響を与えるって本当ですか?
温暖化対策担当 山上 晃央
本当です。大気や海洋の最も支配的な現象として赤道ではエルニーニョ・南方振動が、北極域では北極振動があります。熊谷の平均気温を用いて調べたところ、エルニーニョ時には暖冬・冷夏となりやすい傾向、逆の現象であるラニーニャ時には夏に高温となりやすい傾向が見られました。また、北極に寒気が留まる北極振動正の時には冬に気温が高くなる傾向が見られました。自然災害に適応するためには、日々の天気予報だけでなく様々な時間スケールの情報(1か月、3か月、季節予報など)を取り入れ備えることが重要です。
埼玉県は最も暑い地域の一つです。熊谷では2007年8月16日に40.9℃、2018年7月23日に41.1℃と、当時の国内最高気温を観測しました。また2025年8月5日には鳩山で41.4℃を観測し、現在の国内2位タイとなっています。こうした高温の発生にはフェーン現象などの局地的な要因が重要ですが、その背景には、季節を通して暑くなりやすい傾向(季節の天候)があります。季節の天候には、日本の上空を吹く西風ジェット気流の蛇行や、太平洋高気圧など支配的な高低気圧の強さが関係しています。では、ジェット気流の蛇行や高低気圧の強さは何が決めているのでしょうか?
日本周辺のジェット気流の蛇行や高低気圧の強さには、赤道や北極での大気の変動が影響します。
赤道で最も顕著な現象がエルニーニョ・南方振動(図1左)です。エルニーニョの時、太平洋赤道域の中~東部で海水温が普段より高くなります。大気では、活発な対流が東へずれ、西側が高気圧偏差、東側が低気圧偏差という南方振動が生じます。また、対流への中緯度の応答として、北米へ向かう高低気圧の列が形成され、中緯度のジェット気流を蛇行させます。逆の現象がラニーニャで、熱帯太平洋の海水温が通常より低く、中央~東側では対流が不活発になります。
また、北極域の現象も中緯度に影響を与え、最も顕著なものが北極振動(図1右)です。北極振動はジェット気流の強弱と関連しており、正の時はジェット気流の蛇行が小さく、北極に寒気が溜まる状態を表します。一方、負の時にはジェット気流が南北に蛇行し、北極の寒気が中緯度に流れ出しやすい状態を表します。日本周辺では、北極振動が正の時に暖かい傾向になり負の時に寒くなる傾向になります。
このように離れた地域の大気の変動が結び付く現象は遠隔影響(テレコネクション)と呼ばれます。

図1 (左)エルニーニョ・ラニーニャ(気象庁HPより)と(右)北極振動(NOAA HPより)の概念図
埼玉県でもそれらの影響を受けるのかを、1990〜2025年の熊谷の平均気温を用いて調べてみました(表1)。
エルニーニョ時は冬に気温が高い傾向(+0.42℃)、夏に気温が低い傾向(-0.51℃)が見られ、暖冬・冷夏という傾向と整合的です。ラニーニャ時は夏に気温が高い傾向(+0.54℃)でした。北極に寒気が留まる時(北極振動正)は冬に気温が高い傾向(+0.80℃)が現れましたが、北極寒気の流出時(北極振動負)は意味のある差はありませんでした。
近年、異常気象の原因は地球温暖化と考えられがちですが、実際にはさまざまな要因(局地〜地球規模の変動、温暖化、都市のヒートアイランドなど)が重なっています。様々な時空間規模の情報を適切に取り入れて、異常気象や災害に適応していくことが大切です。

表1 各現象発生時の熊谷の冬と夏の平均気温
*エルニーニョ(ラニーニャ)は気象庁のNINO3における海水温平年偏差が0.5℃以上(-0.5℃以下)の月で定義
*北極振動はNOAA CPCが提供する月別AO指数の、各季節のAO指数の1標準偏差以上(-1標準偏差以下)を正(負)として定義
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