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掲載日:2019年10月15日

平成28年9月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(高木真理議員)

精神病床から地域へ

Q 高木真理議員(民進・無所属

さて、今相模原の事件を受けて、措置入院者についてしっかりしたフォロー体制がとられるべきだという質問をさせていただきましたが、一方で、精神疾患や精神障害を持つ方々が今回の事件を受けて不必要に病院に閉じ込められたり、偏見が広がることが断じてあってはなりません。誤った方向に社会の風潮が行ってしまうことのないように、併せてこの問題について取り上げたいと思います。前回の一般質問でも取り上げていますが、別のアプローチで伺います。
日本の精神科医療の入院治療は、世界でも極めて異質な形で進められてきました。戦後、精神病床の早期整備の必要性を考えた国は、民間主体の精神科病院の整備を促進、医師・看護師の配置を一般病床に比べて一層少なくてよいことにし、入院患者を囲むことでもうかる図式を許しました。
そんな中、まず異常な数のベッド数が整備されました。世界中の精神科病床の何と5分の1が日本にあります。有名なイタリアのトリエステでは地域の精神保健福祉機能を充実させ、精神科病院を何と廃止。公立総合病院内の精神科病室で対応しており、精神科病床は人口1万人に対して1床しかありません。対する日本は27床。多過ぎます。埼玉県内の精神病床数は昨年1万4,278床、10年前からほとんど減っていません。
次に、入院が長過ぎる問題です。
この問題には、平成16年から国を挙げての取組が行われており、短縮傾向は出ていますが、それでも平成27年度の本県平均在院日数は273.9日で、OECD諸国の平均在院日数が10年前でも50日であったことを考えると、突出した長さが分かります。長過ぎる入院は、患者さん一人一人が地域で暮らしながら、病気や障害を持ちつつも自分らしく暮らす選択肢を奪ってしまいます。また、医療費の観点からも問題です。
この問題の解決には、様々な主体が動かなければなりません。医療には、入院が必要な患者さんを見極める力を持つこと、できるだけ短期で退院できるような治療に努めること、退院可能な長期入院者の退院を促進することなどが求められます。認知症の患者さんを高齢者施設がわりに入院させるのもいけません。退院後の地域での暮らしを支えるために、訪問診療などのアウトリーチ医療の充実も求められます。
地域では精神保健福祉を充実させ、退院した一人一人が症状ともうまく付き合いながら、地域になじんで暮らしていける様々な体制づくり、フォローが必要です。地域福祉の側から医療側に、受皿は大丈夫ですから退院は御安心をとアプローチする必要もあるでしょう。
今、一般病床の世界で地域包括ケアシステムの構築を進める中、今まで余り対話がなかったお医者さんと介護者のコミュニケーションが進み始めました。縦割りでやっていたのではだめなのです。同じことが精神病床でも言えます。
さて、行政としての県ができることは何か、今挙げてきたことの中にあります。まず、福祉の方面からは、市町村における精神障害者の暮らしやすい福祉の受皿を充実させるよう働き掛けること、市町村に地域移行支援を積極的に行うよう働き掛けること、市町村の自立支援協議会に地域移行に関する部会を作ってもらい、特出しして取り組んでもらうことも有効でしょう。精神科病院の職員さんに地域移行の受皿などについてよく理解してもらうための研修を福祉の側からアプローチして実施する。退院体験を語れるピアサポーターの活動を更に充実させることも必要です。
医療の方面からは、各精神科病院の平均在院日数をホームページなどで公表し、病院の自助努力を促すことはできないでしょうか。ビッグデータを活用し、病院名を伏せて公表することから始めてもよいと思います。また、なぜ医療者が早期退院を目指しながら、個々の患者さんの退院を諦めざるを得ないのか、県がその事情を把握することで取組の糸口が見えてくるのではないでしょうか。
さらに地域精神保健の充実を促す意味で、退院後の医療の側面をフォローできるようにアウトリーチの医療体制を促進すべく、医療関係者に働き掛けていくことも一つです。岡山県では、県の精神保健福祉センターが自らこのアウトリーチを行っています。また、前回の質問でも取り上げた多職種連携のACTの活動は、この医療のアウトリーチに多職種で福祉部門の担当も関わることで成果を上げる活動ですが、医療と福祉の垣根を越えた活動も重要になってきます。埼玉県を精神科医療福祉の先進地にしていこうではありませんか。
そこで、保健医療部長、福祉部長、両名に伺います。県内の精神科病床の平均在院日数がまだ長く、地域移行が進んでいない状況について、この問題をどう捉えているか。この問題の解決に向けて県にできることを述べさせていただきましたが、埼玉県として何に、どのように、どこまで取り組んでいくのか、連携の形も含めてお答えください。

A 三田一夫 保健医療部長

まず、精神科病床の平均在院日数が長く、地域移行が進んでいない状況について、この問題をどう捉えているかについてです。
国が平成16年に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を定めて以来、今日まで、精神科病床の長期入院を減らそうという取組を進めてきました。
こうした経緯の中で、診療報酬体系も、急性期の入院医療に厚く加算したり入院期間が長期になれば報酬が低くなる改定が行われています。
平成26年には、精神保健福祉法の改正により、医療機関には、医療保護入院者に対する退院後生活環境相談員を配置することになりました。
また、患者や家族、主治医、看護職員、精神保健福祉士等による退院支援委員会の開催も義務付けられたところです。
この10年間の精神科病床の平均在院日数は、埼玉県の場合、平成18年の334日から平成27年には274日と60日減少しました。
県内精神科病院の入院期間は、長期と短期に二極化しており、議員お話しのOECD諸国の平均50日を下回る30日未満で退院する患者も1割以上になっております。
一方で、長期間入院を継続している患者もあり、地域での生活を支えるための精神医療の実現を目指し、更に入院期間の短縮をしていく必要があると認識しております。
次に、この問題の解決に向けて、県として何に、どのように、どこまで取り組んでいくのかについてでございます。
まずは、精神科病院において退院後生活環境相談員の選任や退院支援委員会の開催が適切に行われることが必要であると考えております。
そこで県では、これらの制度が機能するよう指導を行うとともに、運営経費に対する一部助成を、引き続き行ってまいります。
また、保健所においては、管内における市町村福祉担当者、福祉サービス事業者に加え、医療関係者が参加して退院支援に係わる連絡調整会議を開催しております。
会議では、病状に応じた治療が可能な医療機関、精神障害者のニーズに応じた福祉サービスなど、地域における医療福祉資源に関する情報交換を行っています。
今後、様々な分野との効果的な連携を図るため、参加者を増やしてまいります。
さらに、在宅患者に対して精神科医療が継続して提供されることも必要です。
県内の精神科訪問看護実施施設数は、統計のある平成19年の30施設から平成26年には38施設に、利用者数は563人から1,279人に、それぞれ増加しています。
県としては、埼玉県精神科病院協会や埼玉精神神経科診療所協会と協力して、医療機関に対し、訪問診療等の取組を働きかけてまいります。
また、医療や福祉などの多職種チームによる訪問支援を行うアウトリーチ事業は、医師や看護師等の人材不足といった課題もありますが、在宅医療を進める上で有効なものと考えます。
また、各精神科病院の平均在院日数をホームページなどで公表することは、統計の利用制約や公表方法等の課題がありますが、病院の自助努力を促す一つの方法と考えますので、病院関係者とも調整を図りながら取り組んでまいります。

A 田島 浩 福祉部長

まず、地域移行が進んでいない状況についてどう捉えているのかについてでございます。
県障害者支援計画では、入院後1年未満の平均退院率を平成29年度に76%とすることを地域移行の目標としておりますが、ここ数年68%台で推移しており、地域移行を更に推進していく必要があると考えております。
精神疾患により入院している方は、病状悪化への不安とともに、住まいや働く場所の確保など、地域で生活する上で様々な課題を抱えております。
このため、患者本人が退院後の生活に不安を抱き入院が長期化したり、病院側も、地域における福祉的な支援に対する不安から、再入院を心配してなかなか退院に踏み切れないこともあると理解しております。
次に、問題解決のためどう取り組んでいくのかについてでございます。
県では、入院経験のある方がサポーターとして病院を訪問し、自らの経験を患者たちに話すことによって不安を取り除き退院への意欲を向上させる取組を行っております。
平成27年度は、21病院を訪問し、退院への不安や退院後の希望などについて話し合うグループワークを延べ202回行いました。
また、退院後の福祉的な支援制度について医療関係者の理解を深め、医療と福祉の関係者の連携を進めるため、合同の研修会を実施しております。
平成27年度は、「退院支援をめぐる地域連携について考える」をテーマに、117人が参加いたしました。
今年度は新たに、退院後の住まいや働く場の確保などの課題を早期に解決するため、入院後早い段階から福祉の相談員が病院に出向いて患者の相談に応じる早期退院支援の事業を開始したところでございます。
精神障害者の地域移行を進めるためには、医療と福祉の関係者がしっかりと連携し、課題の解決に向けて協議をすることが重要でございます。
このため、市町村に対し、医療と福祉の関係者が地域で必要な福祉サービスなどについて協議する場を設けるよう働き掛けてまいります。
また、県全域の障害者支援について協議する場であります県自立支援協議会に精神障害者の地域移行に関する部会を設置することを検討いたします。
県といたしましては、このような取組により医療と福祉の連携を強化し、より多くの精神障害者が地域で安心して生活できるよう努めてまいります。

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。

注意:議員の氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字があるため、第1・第2水準の漢字で表記しているものがあります。

お問い合わせ

議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4923

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