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掲載日:2023年12月20日

令和2年12月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(秋山もえ議員)

バックキャストで温室効果ガスゼロへ、埼玉県気候非常事態宣言を

Q  秋山もえ  議員(共産党)

菅首相が所信表明で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするとしました。これは既に120カ国以上で掲げられているものです。日本もようやく国際基準の目標を掲げたことになります。実質ゼロの目標を絵に描いた餅にしないために、エネルギーをはじめ従来の政策を根本から転換することが急がれます。
埼玉県は、昨年の台風第19号により河川の氾濫や崖の崩落、堤防の決壊などで深刻な被害を受けました。温暖化による気候変動は、私たちの暮らしの土台を揺るがしています。本県では、埼玉県地球温暖化対策実行計画(第2期)を策定していますが、2030年度までの計画であり、これでは2050年度までにゼロ目標は達成できません。
私は、県レベルで初の気候非常事態宣言、2050ゼロカーボン宣言を発表した長野県を訪問し、お話を伺いました。長野県の職員の「できる、できないで議論すれば、できる範囲の目標になりやすい。ゼロを打ち出してから、やるべきことを考えると発想が湧いてくる。ビジョンを打ち出すと、県民の協力を引き出すこともできる」、こうしたバックキャストの考え方に励まされました。長野県の揺るぎない姿勢によって、長野県の全市町村が県の気候非常事態宣言に賛同を表明しています。
知事、本県もこのように県民を励まし、自治体の力を引き出していただきたい。昨日、他の議員からも質問もありましたが、改めて2050年ゼロカーボンへの決意をお示しください。
長野県には具体的施策として、建築物環境エネルギー性能導入支援や信州屋根ソーラーポテンシャルマップづくりなど興味深いものが様々ありますが、特に優良な小規模再生可能エネルギー事業へ資金を融資し、自然災害などで失敗したときには返済を免除する収益納付型補助金制度は、本県でも取り入れるべきと考えますが、環境部長の答弁を求めます。
今、時代は再生可能エネルギーの発展を求めておりますが、そのためにも悪質な太陽光発電事業者の規制は避けて通れません。今、太陽光発電事業者による乱開発が埼玉県の丘陵地域を虫食い状態にしています。嵐山町志賀の太陽光発電施設が10月13日に崩落し、東武東上線の線路まであと20メートルの地点まで土砂が迫りました。これまでも小規模な土砂崩れが繰り返されています。この太陽光発電施設のための林地開発を県は許可しています。
農林部長、このように崩落を繰り返す嵐山の計画について、なぜ林地開発を許可したのか、答弁を求めます。
飯能市の阿須山中の太陽光発電施設の開発許可について8月に審議会が開かれ、審議委員11人中、9人が懸念を述べるという大議論になりましたが、県の示す基準を満たしているのでやむを得ないとの答申が行われました。審議会の中で専門家である会長は、県の林地開発基準について自然斜面に太陽光発電施設を置いたときに、どこがどう変わって、どんな現象が起きるかということを検討する必要があると、国の議論を紹介しています。森林審議会は昨年度も二つの太陽光発電施設の開発許可をやむを得ないと答申しています。審議会が許可したくないがやむを得ないと繰り返す状況は異常です。
太陽光発電による崖崩れなどを防止できるように県の開発基準を見直すべきと考えますがどうか。その際、嵐山志賀をはじめ林地開発を許可したにもかかわらず崩落したような案件を調査し、県の基準見直しに生かすべきと考えます。農林部長、答弁を求めます。
小川町飯田区内では、県内唯一といえる明治時代の炭鉱跡地に太陽光発電施設が計画され、炭鉱の保存と崩落の危険性の両面から、反対の署名が町に提出されています。この計画について林地開発の許可申請がされた場合、開発地の歴史的遺跡保護や過去の落盤事故の経過などが十分に審査されるべきと考えますが、農林部長、答弁を求めます。
埼玉県の丘陵地帯は、希少動植物の宝庫でもあります。しかし、太陽光発電による乱開発が、こうした希少種絶滅の危機を引き起こしています。飯能市阿須山中の開発予定地は、特別天然記念物カモシカが目撃され、県レッドデータブック記載の絶滅危惧1B類のコクランが生育しています。小川町飯田区内予定地では、1B類のミゾゴイ、1A類のサシバが生育しています。
県により林地開発許可が下りた阿須山中では、早速、県希少種保護条例に基づきコクランの移植が行われました。希少種を安易に別の場所に移すというのは、日本も締結している生物多様性条約の趣旨に反するものです。日本弁護士連合会は、森林法をはじめ都市計画法、農地法、道路法などが生物多様性の保全に対する配慮について明言していないと批判していますが、大変的を射ていると思います。
知事は、埼玉版SDGsとして「埼玉の豊かな水と緑を守り育む」を掲げられておりますが、埼玉県の希少動植物や緑をどう守り育んでいくおつもりか、答弁を求めます。

A  大野元裕  知事

2050年ゼロカーボンへの決意についてでございます。
気候変動問題は喫緊の課題であり、県では、今年3月に新たな地球温暖化対策実行計画を策定し、2050年以降のできるだけ早期に脱炭素社会を実現することを掲げております。
この実現のためには、計画では、県はもとより、国、市町村、事業者、県民などが協働して、温暖化対策を推進することとしております。
県ではこれまでも実効性のある先進的な施策に取り組んでまいりました。
大規模事業所のCO2

排出削減を図る目標設定型排出量取引制度においては、事業者の皆様に目標を上回る削減に取り組んでいただきました。
また、一日環境家計簿であるエコライフDAY

 

の取組では、市町村とも協力しながら毎年90万人を超える県民に御参加をいただいております。折しも、温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」が今年から実施段階に移り、米国、中国などでも大きな動きが広がっております。
国も2050年までの温室効果ガスゼロ宣言を行うなど、国内情勢も転換点を迎えており、今後、国によりグリーン成長戦略に関する議論やエネルギー基本計画のエネルギーミックスの見直しが進められると考えております。
議員お尋ねの気候非常事態宣言につきましては、ゼロ宣言を行えば裏付けのある実効的な発想が生まれてくるとは考えてはおらず、2050年ゼロカーボンを見据えて実効的で具体的な取組を検討、実施することが政治の責任であり、議員のお言葉をお借りすれば絵に描いた餅にしない道筋だと考えます。
2050年ゼロカーボンを見据えて、県民や事業者、国、市町村など地域総ぐるみで取り組んでまいりたいと思います。
次に、埼玉県の希少動植物や緑をどう守り育んでいくのかについてでございます。
埼玉版SDGsの推進を図ることは、あらゆる人に居場所があり、活躍でき、安心して暮らせる「日本一暮らしやすい埼玉県」の実現につながるものです。
重点テーマの一つである「埼玉の豊かな水と緑を守り育む」ことは、我々が生きていく上でも、SDGsの目標を達成するという点でも大変重要だと思います。
県では、平成12年に「希少野生動植物の種の保護に関する条例」を制定しました。
これは、県や県民

 

 

が一体となって希少種の保護を図り、県民共通の財産として次代に継承することを目的としています。議員お話しのコクランの移植につきましては、開発により失われてしまう希少種を保護するため、条例の趣旨にのっとり丁寧に実施されたことを確認をいたしました。
このほかにも、サワトラノオなどの希少な動植物を保護するため、小中学校など145カ所で栽培し繁殖するなど、保護増殖の取組も進めております。
緑の保全につきましては、豊かな生態系の保護や生物多様性の保全の上でも重要であり、「緑のトラスト運動」など県民参加による取組を行っております。
こうした取組は、まさにSDGsのゴールの一つである「陸の豊かさも守ろう」につながるものです。
今後も豊かな自然と共生しながら持続的に発展する埼玉の実現に向けて取り組んでまいります。

 

A  小池要子  環境部長

 

小規模再生可能エネルギー事業に対する補助金制度について、お答えを申し上げます。
議員お尋ねの長野県の制度は、企業やNPO法人などが固定価格買取制度いわゆるFITを活用し、小水力や太陽光など自然エネルギーによる発電事業を行う際に県が補助を行い、事業開始後に収益が生じた場合、返済してもらうというものです。
長野県は高い山が多く、水も豊富であることから、環境省の調査によれば全国4位の小水力発電のポテンシャルがあるとされております。
小水力発電はFITによる売電価格は太陽光発電に比べ高いものの、導水管の敷設工事などにかかる多額の初期コストが課題となっており、このような背景から本制度を創設したものと聞いております。
本制度が活用された33件のうち、小水力発電の事業可能性調査等が21件、うち1件が施設整備に至っております。
本県の場合、小水力発電のポテンシャルは長野県の約60分の1と、この制度をそのまま取り入れることについては、慎重な検討が必要であると考えております。
今後も、本県の地域特性に応じた再生可能エネルギーの活用に努めてまいります。

 

A  強瀬道男  農林部長

 

嵐山の計画について、なぜ林地開発を許可したのかについてでございます。
林地開発の許可に当たっては、森林法で定める災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全の4つの項目について、国の技術的助言を踏まえた県の要領で定める許可基準に照らし、審査を行っています。
今回の嵐山の事業計画については、土砂の流出など災害の防止について、切土・盛土の勾配や表面の植生による保護、排水施設の設置などに関する全ての基準を満たしていました。
また、環境の保全などそのほかの項目についても同様に許可基準を満たしていたことから、平成30年7月に許可したものでございます。
次に、太陽光発電による崖崩れなどを防止できるように県の開発基準を見直すべき、その際、崩落したような案件を調査し、県の基準見直しに生かすべきについてでございます。
議員お話しの崩落については、盛土した法面、幅約20メートル、高さ5メートルの土砂が崩れたもので事業区域外への影響はありませんでしたが、林地開発許可を行った区域において崩落が生じたことについて、重く受け止めております。
このため、県では、崩落が起きた直後に現場の状況を確認し、この崩落は、現時点では大雨により地山

と盛土部分の間で滑りが生じたものと推定しております。
一方、全国的にも、近年、多発する豪雨により山地災害の発生リスクが高まるとともに、太陽光発電に関する開発における土砂流出などの被害も発生しています。
こうした状況を踏まえ、国では昨年、太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討が行われました。
その検討結果を踏まえ、国が昨年12月に施工区域内に残す森林の割合や排水に関する計算の仕方などの技術的助言を見直したことから、本年3月に県の許可基準の必要な改正を行ったところです。
今後、県として林地開発許可制度を適切に運用していく上では、崩落が起きた許可案件について、工事完了後の管理の在り方を含め、詳細な原因を調査することが重要と考えています。
太陽光発電に関しては、これまでに24件の林地開発許可を行っており、このうち工事が完了したものが16件あり、県が把握している限りでは工事完了後に生じた崩落は今回の件が初めてです。
現在、事業者と協力し、ボーリング調査などにより詳細な発生原因の究明を行っています。
調査結果が出るまでは、林地開発許可にあたっては今回の崩落を念頭に慎重な審査を行ってまいります。
また、調査の結果が明らかになり次第、結果を踏まえて専門家の助言もいただきながら更なる許可基準の改正を含め、審査の在り方について点検してまいります。
次に、開発地の歴史的遺跡保護や過去の落盤事故の経過などが、十分に審査されるべきについてでございます。
林地開発について、森林法では、災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全の4つの項目に係る基準を満たしているときは、許可しなければならない規定となっております。
過去の落盤事故の経過など災害の防止に関係する項目については、現地の状況を確認した上で、必要な対策が講じられているかについて十分に審査してまいります。

 

再Q  秋山もえ  議員(共産党)

 

知事からは、ゼロカーボンへの決意や、また宣言についての考え方も触れてお答えいただきました。今回、私が取り上げたのが、長野県での取組を紹介させていただいたわけなんですけれども、国の状況を見ながらということもあると思いますが、県として国をリードしていくような、そんな取組も大事だなというふうに思っております。
しかしながら、知事も国、市などの取組と連動してということですから、例えば気候非常事態宣言について検討していくという場合、国の方針が定まったら、これはもう直ちに県として宣言していくというふうに私は受け取ったわけなんですけれども、それで間違いがないかどうか、御答弁をよろしくお願いいたします。

 

再A  大野元裕  知事

 

国の方針が定まったならば宣言を行うのかに関し、ご答弁をさせていただきます。
まず第一に、私は気候非常事態宣言というその非常事態の認識の宣言よりも、ゼロカーボンをいかに実現していくか、ということの認識そのものよりも現実にどのように行っていくかということが大切だということを、先ほど考え方としてお話をさせていただきました。
その上で、国の考え方が定まったら宣言するかではなく、国の考え方の中身がどのようになるかに、私はよると考えております。
と申しますのも、菅総理が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、これはとても私も良いことであるし、意欲的な取組であるし、埼玉県としても取り組むべきことだというふうにまず認識しております。
他方で、だとすれば、今後、基本計画やエネルギーミックス等がこれから出てくるものと当然思われますので、それに従って実効的な道筋というものをしっかりと打ち立てさせていただきたいと考えています。
まずその中身を見させていただいた上で、ゼロカーボンに向けて埼玉県が例えばいついつまでにとか、あるいはこれこれこうするといった方針をきちんとした形で示させていただきたいというふうに考えております。

 

 

 

 

 

 

 

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

 

 

 

 

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議会事務局 政策調査課 広報担当

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