トップページ > 県政情報・統計 > 県概要 > 組織案内 > 保健医療部 > 保健医療部の地域機関 > 衛生研究所 > 感染症情報センター > 埼玉県全域における最新のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のゲノム情報
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掲載日:2025年6月11日
ここから本文です。
新型コロナウイルス感染症の流行の波(第1波~第11波)では、それぞれの波で主流となる流行株は異なっていました。新型コロナウイルス感染症の動向を把握するには、ウイルスのゲノム情報を早期に把握することが重要となります。
埼玉県衛生研究所でおこなったゲノムの解析結果に加え、県内政令市・中核市、民間検査機関、国立感染症研究所が実施したゲノム解析結果を分析し、検出状況を掲載しました。
【現在の状況】
2025年5月23日付けでWHOによってVUMに指定されたNB.1.8.1が、4月中旬以降、県内でも検出されています。今後の患者報告数の動向と併せて注意が必要です。
COVID-19のゲノム検出状況
特定のアミノ酸変異を有する変異株について
新型コロナウイルス感染症発生当初から現在までのゲノム解析結果が得られた陽性者の人数を、系統別(一部、亜型別)・検体採取週別に集計しました。
県内流行の第1波から第11波まで、いずれも主流となる流行株の亜型は異なっていました。
第8波は第7波と同様のBA.5系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、系統の中の亜型は異なっています。
第9波から第12波は、第6波(後半)と同様のBA.2系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、それぞれの期間において系統の中の亜型は異なっています。
第7波以降の亜型、系統については次の項目以降に掲載しています。
第10波以降(2023年11月以降)の埼玉県内における、系統別の検出状況を集計しました。
【各波における主流系統について】
第10波(2023年11月~2024年4月)
前半(2023年11月中旬~12月)は、BA.2の子孫系統であるBA.2.86系統(通称:ピロラ)が検出され始めました。第10波のピーク付近(2024年1月~2月前半)ではJN.1系統(BA.2.86系統の子孫系統)の検出数が急激に増加し、第10波の後半(2024年2月~4月)にかけてJN.1系統の占める割合が増加しました。また、4月下旬以降、JN.1系統の子孫系統であるKP.3系統が検出されました。
第11波(2024年5月~11月上旬)
第10波の後半に検出されたKP.3系統の検出数は、7月下旬にかけて増加しましたが、7月22日~28日の週を境に10月末まで減少しました。8月以降は、KP.3.1.1系統の検出がみられるようになり、10月末にかけて総検出数が減少する中でKP.3.1.1系統の検出割合は増加しました。
第12波以降(2024年11月中旬~)
2024年11月中旬から2025年1月上旬にかけて、WHOによりVUM(監視下の変異株)に指定されているXEC、KP.3.1.1及びそれらの子孫系統からなるXEC系統やKP.3.1.1系統により総検出数が増加しましたが、特にXEC系統の検出が多い状況にありました。その後、5月上旬にかけて総検出数は減少傾向にあり、XEC系統及びKP.3.1.1系統も同様に減少傾向にあります。一方で、5月23日付けでVUMに指定されたNB.1.8.1が4月中旬以降、県内でも検出されており、今後の動向に注意が必要な状況です。
VUM及びBA.2.86系統(通称:ピロラ)とその子孫系統の詳細な説明は、BA.2.86系統(通称:ピロラ)及びその子孫系統に関するWHOの情報等についてをご確認ください。
第12波以降(2024年11月以降)に検出されている亜型について、埼玉県内の検出状況(検体採取週別)を下図に示しました。特に、2025年4月下旬以降に検出されているNB1.8.1はWHOによりVUM(監視下の変異株)に指定されており、埼玉県でも今後の動向について注視しています。
サイズ拡大版のグラフ(エクセル:242KB)
2024年11月から12月にかけて、XEC及びKP.3.1.1 の検出割合が多い状況が続いていましたが、KP.3.1.1はその後減少傾向が続いています。一方でXEC並びにXEC.2及びXEC.4を始めとするXEC系統に属する種々の子孫株は、2024年11月から2025年4月下旬にかけて毎週、検出割合の多くを占めています。また、2025年第16週(4月14日~4月20日)から、5月23日付けで新たにVUMに指定されたNB.1.8.1が県内でも検出されており、今後の動向に注意が必要な状況です。
2024年11月以降の埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数に、上図の週毎の変異株の検出割合をかけて、定点当たり週別報告数の系統別の内訳を推計しました。
2024年11月以降は、XEC、KP.3.1.1及びその子孫系統に属する亜型の検出が増加し、患者報告数も増加傾向となりました。2024年第52週(12月23日~12月29日)から2025年1月中旬にかけてXEC及びその子孫株の流行やXEC系統の中での新亜型の出現が続く中で、KP.3.1.1系統の減少傾向の影響により、患者報告数は同水準で推移していました。2025年1月下旬以降、XEC系統の種々の新亜型の出現及び検出数の増加傾向が続き、2025年第6週(2月3日~2月9日)の小さなピーク(10歳代以下の若い世代が中心)が形成されました。第12波はKP.3.1.1系統の減少によって2024年第52週に流行のピークをすでに迎えましたが、減少局面が明らかとなった2月以降も、XEC系統の種々の新たな亜型が出現し続けているため、上昇局面と比較して緩やかに減少を続けています。また、2025年第16週(4月14日~4月20日)から、5月23日付けで新たにVUMに指定されたNB.1.8.1が県内でも検出されており、今後の動向に注意が必要な状況です。
直近の発生状況は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。
(過去の発生状況は、2023年5月7日以前のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。)
埼玉県で検出されたCOVID-19の亜型について、期間ごとに、亜型数と特定のアミノ酸変異を有する亜型の割合を集計しました。
波(期間) | 亜型の数 | 特定の変異の種類(特定の変異を有する亜型の割合) |
---|---|---|
第7波(2022年6月~9月) | 50以上 | R346T変異(約4%) |
第8波(2022年10月~2023年3月) | 160以上 | R346T変異(約51%) |
第9波(2023年4月~11月中旬) | 270以上 |
R346T変異とF486P変異(約73%) R346T変異とF486P変異とF456L変異(約14%) |
第10波(2023年11月下旬~2024年4月) | 120以上 |
R346T変異とF486P変異とF456L変異とL455F変異(約25%) F486P変異とL455S変異(JN.1等、約21%) |
第11波(2024年5月~11月上旬) | 70以上 |
F486P変異とL455S変異(JN.1等、約12%) F486P変異とL455S変異とF456L変異とQ493E変異(KP3等、約37%) |
第12波(2024年11月中旬~) | 70以上 |
F486P変異とL455S変異とF456L変異(JN.1.11.1等、約14%) F486P変異とL455S変異とF456L変異とQ493E変異(KP3等、約84%) |
そこで、埼玉県で検出があった変異株を、検体採取週別・系統別に、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異、L455S変異の5つの変異の有無によって区別し集計しました。また、BA.2.86系統については、Q493E変異の有無によっても区別し集計しています。
凡例 | 系統 | R346T変異 | F486P変異 | F456L変異 | L455F変異 | L455S変異 | Q493E変異 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
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BA.2 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
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BA.5 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
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BA.5 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
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BA.2 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | |
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BA.2 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | |
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BA.2 | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | ✕ | |
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BA.2 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ✕ | |
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BA.2.86 | ✕ | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ |
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BA.2.86 | ※ | 〇 | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ |
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BA.2.86 | ※ | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
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BA.2.86 | ※ | 〇 | 〇 | ✕ | 〇 | 〇 |
〇:変異を持つ ✕:変異を持たない ※:変異を持たない亜型が多いものの、一部持つ亜型が存在
埼玉県で検出された系統別・特定のアミノ酸の変異の有無別、検出数の推移
【各波における主流系統について】
第7波(2022年6月~9月)
前半(6月~7月上旬):特定のアミノ酸変異を持たないBA.2系統()
後半(7月中旬~9月):特定のアミノ酸変異を持たないBA.5系統()
第8波(2022年10月~2023年3月)
前半(2022年10月中旬~11月):特定のアミノ酸変異を持たないBA.5系統()
後半(2022年12月~2023年3月):R346T変異を持つBA.5系統()、R346T変異を持つBA.2系統(
)
第9波(2023年4月~11月)
前半(2023年4月~9月上旬):R346T変異とF486P変異を持つBA.2系統()
後半(2023年9月中旬~11月):R346T変異、F486P変異、F456L変異を持つBA.2系統()、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を持つBA.2系統(
)
第10波(2023年11月~2024年4月)
前半~中盤(2023年11月~2025年1月):R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を持つBA.2系統()
中盤~後半(2025年1月~4月):BA.2.86系統()、L455S変異を持つBA.2.86系統(
)L455S及びF456L変異を持つBA.2.86系統(
)
第11波以降(2024年5月~)
第11波の初期に検出され始めたL455S、F456L及びQ493E変異を持つBA.2.86系統()の検出が主流となっており、7月下旬にかけて検出数は増加傾向にありましたが、2024年第30週(7月22日~28日)の週を境に減少傾向に転じました。12月以降は、同じくL455S、F456L及びQ493E変異を持つBA.2.86系統(
)の検出が緩やかに増加していましたが、2025年第2週(1月6日~12日)の週を境に減少傾向に転じています。
(埼玉県内で検出された特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
2022年10月以降の埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数(2022年9月26日から2023年5月7日は全数報告からの推計値、2023年5月8日以降は定点医療機関からの報告に基づく定点当たり報告数)に、上図の週ごとの変異株系統の割合をかけて、定点当たり週別報告数の系統別の内訳を推計しました(2023年5月8日以降のCOVID-19の流行情報及び2023年5月7日以前の全数報告時のデータを用いた定点当たり報告数の推計につきましてはそれぞれリンク先をご覧ください)。
埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数をみると、第9波にあたる2023年8月から9月にかけて急激な患者数の増加がみられていました。その要因の一つとして、F456L変異を有するBA.2系統()が増加していたことが考えられます。
また、2023年12月以降に定点当たり週別報告数の増加がみられました。2023年12月中旬はL455F変異を有するBA.2系統()が流行の大部分を占めていましたが、2024年1月以降はBA.2.86系統(通称:ピロラ)のうち、JN.1系統をはじめとするL455S変異を有するBA.2.86系統(
)が急激に増加しており、第10波の流行に影響を及ぼしたと考えられます。2024年2月以降、L455S及びF456L変異を有するBA.2.86系統(
)が検出され始めました。
2024年4月下旬以降は、KP.3系統をはじめとするL455S、F456L及びQ493E変異を有するBA.2.86系統()に検出数の増加がみられ、それに伴い患者数の増加が確認されました。L455S、F456L及びQ493E変異を有するBA.2.86系統(
)が、第11波にあたる2024年5月以降の流行に影響を及ぼしたと考えられます。2024年11月中旬以降は、第11波と同じくL455S、F456L及びQ493E変異を有するBA.2.86系統(
)の検出が増加し、第12波が到来しました。しかし、検出された亜型は、KP.3系統の子孫株であるKP.3.1.1系統やXEC系統など、L455S、F456L及びQ493E変異を有するBA.2.86系統(
)の中でも第11波とは異なる亜型が多く検出されています。
(埼玉県内で検出された特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
2022年9月8日以降に埼玉県内で検出されたBA.2.86系統(通称:ピロラ)のうち、スパイク蛋白質のL455S変異の有無別に図示しました。
さらに、F456L変異を有する亜型については、薄い青色で染めて示し、F456L変異及びQ493E変異を有する亜型については薄い紫色で示しています。
2022年9月8日以降に埼玉県内で検出された亜型のうち、スパイク蛋白質のR346T変異を有する変異株を、BA.5系統及びBA.2系統に分け、F486P変異を有する系統は薄いピンク色、持たない系統は薄い青色で示し、エクセルファイルにまとめました。
また、BA.2系統については、系統別に分類し、その中でも、F456L変異を有する変異株を黄色、L455F変異を有する変異株を橙色で染めています。
なお、BA.2.86系統(通称:ピロラ)はR346Tを持たないことが多いため、下の分類表(Excelファイル)には掲載していません。
詳細については、以下のExcelファイルをご覧ください。
BA.2及びBA.5系統におけるR346T、F486P、F456L、L455F変異の有無別一覧表(エクセル:38KB)
世界保健機関(WHO)では、新型コロナウイルス感染症の変異株の変異についてリスク分析を行い、そのリスクに応じ、VOC(variant of concern:懸念される変異株)、VOI(variant of interest:注目すべき変異株)、VUM(variant under monitoring:監視下の変異株)に分類しています。
2025年6月5日現在における分類は以下のとおりです。
VOC(懸念される変異株) | VOI (注目すべき変異株) |
VUM (監視下の変異株) |
|
---|---|---|---|
該当なし |
JN.1(BA.2.86.1.1)系統* |
KP.3(JN.1.11.1.3)2024年5月3日指定 NB.1.8.1(XDV.1.5.1.1.8.1※3)2025年5月23日指定 |
*VUMに分類されているJN.1の亜系統は除く
※1 KP.3.3(JN.1.11.1.3.3)※2 KS.1.1(JN.1.13.1.1.1)※3XDV:JN.1とXDE※4の組換え体
※4XDE:GW.5.1(XBB.1.19.1.5.1)とFL.13.4(XBB.1.9.1.13.4)の組換え体
WHOは、2023年11月21日に、BA.2.86系統(通称:ピロラ)が世界的に増加傾向にあることを踏まえVOIに指定しました。(2024年12月にVOIの対象から外れました)
WHOのリスク評価で判明している、BA.2.86系統に関する主要事項は以下のとおりです。
さらに、WHOは、2023年12月18日に、BA.2.86系統の子孫系統であるJN.1(BA.2.86.1.1)系統の検出割合が世界的に急増したことを踏まえVOIに指定しました。
WHOのリスク評価で判明している、JN.1に関する主要事項は以下のとおりです。
また、WHOは、2024年5月3日に、JN.1系統の子孫株であるKP.3(JN.1.11.1.3)をVUMに指定しました。
KP.3は、JN.1のスパイク蛋白質のアミノ酸にF456L及びQ493E変異が加わった変異株です。F456L変異を有する変異株は、感染性や免疫逃避性が高くなると言われています。
2024年9月24日には、WHOはXECをVUMに指定しました。
XECはKP.3.3( JN.1.11.1.3.3)とKS.1.1(JN.1.13.1.1.1)の組換え体であり、VUMに指定されているKP.3系統と同様に、スパイク蛋白質のアミノ酸にF456L及びQ493E変異を有しています。
2025年1月24日には、WHOはJN.1系統の子孫株であるLP.8.1(KP.1.1.3.8.1(JN.1.11.1.1.1.3.8.1))をVUMに指定しました。
LP.8.1はVUMに指定されているKP.3及びXECと同様にスパイク蛋白質のアミノ酸にF456L及びQ493E変異を有しています。
2025年5月23日には、WHOはJN.1とXDEの組換え体(XDV)の子孫株であるNB.1.8.1(XDV.1.5.1.1.8.1)をVUMに指定しました。
NB.1.8.1 はVUMに指定されているKP.3、XEC及びLP.8.1と同様にスパイク蛋白質のアミノ酸にF456L及びQ493E変異を有しています。
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