ページ番号:18252

掲載日:2024年3月26日

ここから本文です。

個人情報保護審査会答申/答申第1号(諮問第2号)

答申第1号(諮問第2号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。)が、本件不服申立ての対象である次の保有個人情報(以下「本件個人情報」という。)について、平成17年3月7日付けで行った部分開示決定は妥当である。

平成○○年度埼玉県公立小・中学校等教員採用選考試験(以下「選考試験」という。)のうち、

  • 第一次試験:適性検査の結果、人物考査書
  • 第二次試験:実技試験の結果、論文試験の結果、面接試験の結果、答案用紙
  • 第二次試験選考方針の本人の領域

2 不服申立て及び審査の経緯

(1)本件不服申立人(以下「申立人」という。)は、平成16年11月25日、改正前の埼玉県個人情報保護条例(以下「旧条例」という。)第12条第1項の規定に基づき、実施機関に対し、選考試験における申立人に係る以下の保有個人情報について、開示請求を行った。

  • (1) 第一次試験の「第1部筆答試験(専門分野)、第2部筆答試験(一般教養・教職科目)、適性検査、面接試験、運動能力検査、志願書、人物考査、クラブ・部活動・ボランティア活動等の記録」における素点・評定・面接時の所見・答案用紙の写し
  • (2) 第二次試験の「実技試験、論文試験、面接試験」における素点・評定・面接時の所見・答案用紙の写し
  • (3) 第二次試験選考方針の本人の領域

(2)実施機関は、平成16年12月8日付けで、旧条例第16条第1項の規定に基づき、(1)のうち「第1部筆答試験(専門分野)の得点、第2部筆答試験(一般教養・教職科目)の得点、面接試験の結果、運動能力検査の結果、志願書、クラブ・部活動・ボランティア活動等の記録」について開示することとし、(1)のうち「適性検査の結果、人物考査書、答案用紙」(2)「実技試験の結果、論文試験の結果、面接試験の結果、答案用紙」(3)「第二次試験選考方針の本人の領域」について旧条例第13条第1項第3号に該当するため不開示とした。

(3)申立人は、不開示と決定された部分について、平成16年12月27日付けで、埼玉県個人情報監察委員(以下「監察委員」という。)に救済の申出を行った。

(4)監察委員は、平成17年2月28日付けで「第一次試験:第1部筆答試験(専門分野(図画工作科実技試験を除く。))答案用紙、第2部筆答試験(一般教養・教職科目)答案用紙」について、旧条例第25条第2項の規定に基づき、原決定を取消しこれを開示するよう勧告し、その余については実施機関の不開示とする判断を適当とした。

(5)実施機関は、平成17年3月7日付けで、選考試験「(1)第一次試験の適性検査の結果、人物考査書、答案用紙」「(2)第二次試験の実技試験の結果、論文試験の結果、面接試験の結果、答案用紙」「(3)第二次試験選考方針の本人の領域」のうち、(1)のうち「第1部筆答試験(専門分野(図画工作科実技試験を除く。))答案用紙、第2部筆答試験(一般教養・教職科目)答案用紙」について開示し、その他の部分を旧条例第13条第1項第3号に該当するため不開示とする部分開示決定を行った。

(6)申立人は、平成17年4月26日付け不服申立書により、実施機関に対し、本件個人情報に係る不開示決定について、本件個人情報は、旧条例第13条第1項第3号に該当しないため開示すべきであるとして不服申立てを行った。

(7)当審査会は、本件不服申立てについて、平成17年5月18日、実施機関から改正後の埼玉県個人情報保護条例第41条の規定に基づく諮問を受けた。

(8)当審査会は、平成17年5月30日、実施機関から、開示決定等に係る「理由説明書」の提出を受けた。

(9)当審査会は、平成17年5月31日、実施機関から意見聴取を行った。

(10)当審査会は、平成17年6月20日、申立人から、実施機関提出の理由説明書に対する「反論書」の提出を受けた。

(11)当審査会は、平成17年7月26日、申立人及び補佐人から意見陳述を受けた。

3 申立人の主張の要旨

  • (1) 当該個人情報が公開されることによって、どのような支障をきたすのか、具体的、個別的かつ明白な説明でなければ不開示の根拠とはならない。
  • (2) 第一次試験の素点ならびに評価が公開されているにもかかわらず何故、第二次試験ならびにその他が公開されないのか全く整合性がない。
  • (3) 第一次試験の結果のみでは、どうして不採用なのか分からない。どうしても納得のいく情報を求め、実際の自分の答案用紙がどのように採点されたのかを知りたい。

本件処分は、選考結果に関する個人情報を正確に知りたいという受験者の開示請求権にそむくものであり、また、その個人情報によって、自己研鑽を積み、本県の学校教育に寄与できる教員になりたいと思っている受験者の願いにそむくものである。

4 実施機関の主張の要旨

選考試験は、受験者の教員としての人間性や指導性を評価する人物重視の選考を行っており、多様な類型の試験等により職務遂行の能力を総合的に判断し、実施している。

したがって、例えば、実技試験の結果や第二次試験選考方針の本人の領域などのように点数化、記号化されたものといえども、それ自体、評価・判断情報であり、不開示とした部分を開示した場合、試験員が判断する際の観点を受験者が知りうることになるなど、受験者の真の人間性や指導性を評価する人物重視の選考に多大な影響を及ぼすとともに、公正かつ公平な審査を困難にするおそれがあるため、不開示としたものである。

5 審査会の判断

(1)旧条例第13条第1項第3号について

本号は、開示請求に係る個人情報の中に、「診療、指導、相談、選考、試験その他の個人に対する評価又は判断に関する事務事業に係る個人情報であって、開示することにより、当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるもの」に該当するものがある場合、当該個人情報を開示しないことができるとしたものである。

選考、試験等に関する情報の中には、記録作成者が、本人に知らせることを予期していないもの、本人に知られないことを前提に作成しているものなどがある。これらについて開示すると、記録作成者と本人との信頼関係を損なう、記録作成者が正確な情報を記録できなくなる、などといった支障が生じることを考慮し定めたものである。

(2)本件個人情報について

本件個人情報は、試験員が受験者を総合的に評価・判断した内容と密接に結びついているものとして、旧条例第13条第1項第3号前段に定める個人情報に該当するものと認められる。

(3)旧条例第13条第1項第3号における「当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるもの」についての該当性について

ア「適性検査の結果」について

適性検査は、教員としての適性を検査することを目的に、毎年、同一の試験方法により実施している。そのため、適性検査の結果を開示すると、次回以降の適性検査において、受験者が意識的に歪曲した回答をするおそれがあることが認められる。

よって、本件情報は、開示することにより当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるものであり、旧条例第13条第1項第3号に該当すると認められる。

イ「人物考査書」について

人物考査書は、実施機関が、本人の最終卒業学校の長等又は在職した所属の長等に評価及び所見等の作成を依頼し、作成者は、本人に知られないことを前提に作成しているものである。そのため、これを開示すると、次回以降の人物考査書の作成において、受験者の否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、選考試験に必要な本人の正確な情報の記録がされなくなるおそれがあると想定される。

よって、本件情報は、開示することにより当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるものであり、旧条例第13条第1項第3号に該当すると認められる。

ウ「実技試験の結果」について

実技試験は、受験者の教員としての指導力を専門的な観点から観察し評価するものである。このため、実技自体の巧拙の評価にとどまらず、面接試験や論文試験だけでは把握できない教科の実践的知識・技能や子どもを引き付ける人間性なども含め、実技試験に臨む意欲・態度について、受験者が教員にふさわしいかどうかといった観点から総合的に評価するものである。

実技試験の試験員は、当該科目についての専門的知識・技能を有することが求められている。そのため、学校勤務の管理職職員など比較的限定された範囲の者から選任されており、受験者の多くが臨時的任用教員として学校に勤務していることを考慮した場合、試験員を特定できる可能性は高いといえる。

こうした状況において実技試験の結果を開示した場合、試験員は、実技の巧拙以外の部分に着眼しマイナス評価をすると、臨時的任用教員として学校に勤務する受験者との間に信頼関係上のトラブルが発生し学校運営に支障が生じることを懸念し、受験者の意欲・態度についての評価を怠るおそれが生じるとともに、遂には、試験員への就任を辞退することまでも予想される。

よって、本件情報は、開示することにより当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるものであり、旧条例第13条第1項第3号に該当すると認められる。

エ「論文試験の結果」について

論文試験は、教育に関する内容を論述させ、課題に関する受験者の考えを求め、受験者が教員として必要とされる学識、応用能力を有しているか、また教員としての適格性を備えているかどうかを判定するために実施しているものであり、第1次試験における筆答試験とは実施の趣旨が異なるものである。

論文試験の採点は、答案用紙の管理の安全性や採点に要する多大な事務量、あるいは教育委員会内部の事務分担等を考慮すると限定された少数のグループが担当していることまでは特定することが可能であると認められる。

そのため、論文試験の結果を開示した場合、次年度以降も受験を希望する者は、より詳しい情報を得たいという気持ちが生じるであろうことから、採点員を務めるグループの者に対し相当量の質問や苦情を寄せることが予想される。

その結果、採点員を務めるグループの者は、対応に多大な時間を割くこととなり、採点業務以外の本来有する業務の遂行に支障が生じるだけでなく、遂には、本来有する業務の遂行に支障が生じることを理由に採点員にふさわしい者が就任に応じなくなるなど、試験の適正な実施が困難となることが予想される。

さらに、相当量の質問や苦情に対応するために、採点結果が受験者に説明し易いよう機械的な採点基準に偏っていくおそれも認められ、そのような場合、受験者は機械的、断片的な記憶に頼っても高得点が獲得できるという結果をもたらすこととなり、教員としての適格性を備えているかを判定する論文試験の趣旨が損なわれるおそれが生じることも予想されるところである。

よって、本件情報は、開示することにより当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるものであり、旧条例第13条第1項第3号に該当すると認められる。

オ「面接試験の結果」について

面接試験は、個人面接、場面指導、集団面接と3回実施し、受験者の人間性を多角的・総合的に評価することを目的とするものである。

面接試験の試験員は、民間人も一部含まれるものの、多くの試験員は学校勤務の管理職職員などの比較的限定された範囲の者から選任されており、受験者の多くが臨時的任用教員として学校に勤務していることを考慮した場合、試験員を特定できる蓋然性は高いといえる。面接試験においては、受験者の面接時の発言、態度、所作など少なからず人格的な部分を評価することが求められることから、試験員が行う評価については、受験者自らが抱いている自己の人格の認識と食い違うことが当然想定される。

そのため、面接試験の結果を開示した場合、試験員の評価と受験者の認識の食い違いについて、試験員が、試験後、受験者に評価の内容等を説明しなければならない場合の困難さを懸念し、また、受験者との間に後日生じるかもしれない信頼関係上のトラブルの発生に配慮して、問題が起きないよう、受験者の否定的な評価についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始し、選考試験に必要な本人の正確な情報の記録がされなくなることが想定されることから、旧条例第13条第1項第3号に該当すると認められる。

カ「答案用紙」について

答案用紙とは、論文試験において本人が記述した論文用紙のことであり、採点員が記載したコメントや評価した理由、また、それを点数化した部分点などが直接書き込まれている。

そのため、答案用紙を開示した場合、コメント等の筆跡などから、少数の管理職職員等から実際に採点を行った管理職職員等を特定することが可能となり、その結果、前示エにおいて述べた事情と比較し、さらに大きな業務遂行上の支障が生じるおそれが認められる。

また、開示された答案用紙の内容を確認することにより、採点基準を推定することも可能となる。試験範囲については「教育に関する内容」と限定されており、採点において採点員が重視した記述内容が判明すると、答案作成のノウハウなどのいわゆる受験技術に基づき、機械的、断片的知識の習得に偏った学習をする者が高得点を獲得するなど、教員としての適格性を備えているかを判定する論文試験の趣旨が損なわれるおそれが生じることが認められる。

よって、本件情報は、開示することにより当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるものであり、旧条例第13条第1項第3号に該当すると認められる。

キ「第二次試験選考方針の本人の領域」について

第二次試験選考方針の本人の領域は、選考試験に当たり、学科試験に偏ることなく人物重視の選考方法となるよう実施機関が独自に設定したものである。

第二次試験選考方針の本人の領域を開示した場合、合格可能な領域に属していると判断した受験者が不合格となった場合、その理由として、受験者は、人物考査書の記述内容に問題があったからであろうと想定することが通常予想されるところである。

そうすると、第二次試験選考方針の本人の領域は、これを開示した場合、結果として、人物考査書を開示したことと同様の結果となることが認められる。

よって、本件情報は、開示することにより当該事務事業の適正な執行を著しく困難にするおそれのあるものであり、旧条例第13条第1項第3号に該当すると認められる。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)

大橋豊彦、栗田和美、高橋滋

審議の経過

年月日

内容

平成17年5月18日

諮問を受ける(諮問第2号)

平成17年5月30日

実施機関から開示決定等理由説明書を受理

平成17年5月31日

実施機関から意見聴取及び審議

平成17年6月20日

申立人から反論書を受理

平成17年6月28日

審議

平成17年7月26日

申立人及び補佐人による意見陳述及び審議

平成17年8月15日

審議

平成17年9月13日

審議

平成17年10月12日

審議

平成17年11月15日

答申

お問い合わせ

総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?