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掲載日:2024年3月26日

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個人情報保護審査会答申/答申第20号(諮問第25号)

答申第20号(諮問第25号)

答申

1 審査会の結論

異議申立人(以下「申立人」という。)が行った開示請求に対して埼玉県知事(以下「実施機関」という。)が行った保有個人情報部分開示決定に対する異議申立てのうち、下記(1)及び(3)の開示を求める部分については、開示決定が行われたことにより異議申立ての利益が消滅したことから、当該部分の異議申立てを却下すべきである。
実施機関が下記(2)を保有していないとして開示しなかったことについては、妥当である。

  • (1)実施機関が生活保護法(以下「法」という。)第29条の規定に基づいて平成17年10月12日付けで行った調査に対する、○○○○生命保険相互会社○○支社長からの回答書
  • (2)申立人名義の○○○○銀行○○支店及び○○○○○銀行○○支店の預金通帳の写し(以下「預金通帳の写し」という。)1枚
  • (3)申立人が実施機関から生活保護を受けていた期間内に受診した医療機関の以下の関係書類
    • ア ○○○○○○病院(○○○町)及び○○○○○○○○医療センター(○○市)でのポリープ発覚分の受診の一切の関係書類一式
    • イ ○○○○○○病院皮膚科でのアレルギーに関する受診の一切の関係書類
    • ウ ○○○○○クリニックのポリープ発覚分の受診に関する一切の関係書類

2 異議申立て等の経緯

(1)原処分の経緯

申立人は、平成20年10月7日、埼玉県個人情報保護条例(以下「条例」という。)第15条第1項の規定に基づき、実施機関に対して、「平成17年10月7日から平成17年12月1日まで申立人が生活保護を受給した際、実施機関が作成した生活保護台帳及び文書の一式」及び「実施機関が東京都○○区に提供した書類一切」の開示請求(以下「本件開示請求」という。)を行った。
これについて、実施機関は、平成20年10月21日、条例第21条第1項の規定に基づき、申立人に係る生活保護台帳(以下「生活保護台帳」という。)を本件開示請求の対象である保有個人情報と特定し、このうち、関係機関の個人名及び個人の印影、電話番号及び銀行口座を除く部分の開示決定(以下「本件処分」という。)を行った。

(2)異議申立ての経緯

申立人は、行政不服審査法に基づき、平成20年10月28日付け、平成20年10月29日付け及び平成20年10月31日付けで、実施機関に対し、本件処分の取消しを求める旨の異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
なお、実施機関は、本件異議申立てについて、行政不服審査法第48条において準用する同法第36条の規定に基づき一つの異議申立てとして併合している。

(3)審議の経緯

  • ア 当審査会は、本件異議申立てについて、平成20年12月2日、実施機関から条例第41条の規定に基づく諮問を受けた。
  • イ 当審査会は、本件異議申立てについて、平成21年1月8日、実施機関から理由説明書の提出を受けた。
  • ウ 当審査会は、平成21年2月18日、申立人から意見書の提出を受けた。
  • エ 当審査会は、平成21年2月18日、実施機関から意見聴取を行った。
  • オ 当審査会は、平成21年4月24日、申立人から意見陳述を受けた。
  • カ 当審査会は、本件異議申立てについて、平成21年6月17日、実施機関から補充理由説明書の提出を受けた。
  • キ 当審査会は、本件異議申立てについて、平成21年7月27日、実施機関から補充理由説明書の提出を受けた。
  • ク 当審査会は、平成21年8月24日、申立人から意見書の提出を受けた。

3 申立人の主張の要旨

(1)内容

処分を取消し、開示されなかった以下の文書の全部開示を求める。

  • ア 実施機関が法第29条の規定に基づいて平成17年10月12日付けで行った調査に対する、○○○○生命保険相互会社○○支社長からの回答書
  • イ 預金通帳の写し1枚
  • ウ 申立人が実施機関から生活保護を受けていた期間内に受診した医療機関の以下の関係書類
    • (ア)○○○○○○病院及び○○○○○○○○医療センターでのポリープ発覚分の受診の一切の関係書類一式
    • (イ)○○○○○○病院皮膚科でのアレルギーに関する受診の一切の関係書類
    • (ウ)○○○○○クリニックのポリープ発覚分の受診に関する一切の関係書類

(2)理由

ア (1)アについて

開示された回答書は調査を行った10者のうち9者のみである。これらの回答書は生活保護の辞退を迫られた事案に関するものであり、残る1者の回答書を開示しないことはその証拠物の秘匿と解せられる。

イ (1)イについて

開示された預金通帳の写しはA4判3枚のみであるが、4枚目の預金通帳の写しが存在するはずである。なぜなら、特に○○○○銀行の預金通帳の写しは最終入出金履歴記入日が平成17年1月13日となっているが、その日以降も同年6月23日までに入金及び出金があったからである。
保護開始前の4か月分が開示されないのは不自然すぎて、実施機関が作為的に開示しなかったことが明らかである。

ウ (1)ウについて

生活保護の辞退を迫られた時にはポリープの良性・悪性の判断がつかなかったことを裏付ける重要な証拠物であることから、実施機関が作為的に開示しなかったものと考えられる。

4 実施機関の主張の要旨

(1)生活保護台帳について

生活保護台帳には、申立人が生活保護を受けた際に実施機関が作成した記録、調査回答文書、保護決定措置及び理由など、生活保護決定に係るすべての文書が編綴されている。

(2)○○区に提供した書類について

○○区に提供した書類は、生活保護台帳に含まれている。

(3)3(1)アについて

法第29条の規定に基づき、平成17年10月12日付けで、申立人から保護申請がなされた同月7日現在の申立人の保険契約の有無、契約内容及び解約返戻金について、○○○○生命保険相互会社○○支社長を含む10者に対する調査を行った。
この調査に対する回答書のうち、同支社長からのものだけが生活保護台帳に編綴されていなかった。このため、同支社長からの回答書を開示しなかった。
しかし、本件異議申立てを受けた後、同支社長からの回答書を生活保護台帳に編綴せずに保有していることを確認した。
このため、同支社長からの回答書2枚について、平成21年7月23日付けで個人の印影を除く部分の開示決定を行った。

(4)3(1)イについて

申立人の生活困窮状況を確認するために、保護申請がなされた際に申立人から預金通帳の写し3枚の提供を受け、生活保護台帳に編綴した。
生活保護台帳にはこれ以外の預金通帳の写しは編綴されていなかったため、開示しなかった。

(5)3(1)ウについて

法第28条第1項の規定に基づき、平成17年10月20日付けで申立人に対し検診命令書を交付し、申立人は診断を行った○○○○病院から平成17年11月15日付けで診断書の交付を受けた。生活保護台帳には検診命令書の写しと診断書の写しが編綴されている。
このほか、申立人から、申立人が○○○○○クリニックを受診した際に交付を受けたA4判3枚の文書の提供を受け、生活保護台帳に編綴した。この文書は申立人から任意に提供を受けたものであり、これ以外には保有していない。
また、一般に、現に生活保護を受けている者が医療機関を受診した場合、その費用は社会保険診療報酬支払基金が医療機関に支払った上で、診療報酬明細書が同基金から生活保護の実施機関に送られる仕組みになっているが、生活保護台帳には診療報酬明細書は編綴されていない。
しかし、審査会に対して上記の主張を行った後、3(1)ウを含む本件開示請求の対象である保有個人情報を生活保護台帳に編綴せずに保有していることを確認した。
このため、以下のものについて、平成21年7月23日付けで開示決定を行った。

  • (1)申立人が、○○○○○クリニックを受診するために平成17年11月5日付けで実施機関に提出した、生活保護法による保護変更申請書(傷病届)
  • (2)申立人が、○○○○○○病院を受診するために平成17年11月21日付けで実施機関に提出した、生活保護法による保護変更申請書(傷病届)
  • (3)平成17年11月分診療報酬明細書(○○○○○○病院外科)
  • (4)平成17年11月分診療報酬明細書(○○○○○○病院皮膚科)
  • (5)平成17年11月分診療報酬明細書(○○○○○クリニック)
  • (6)平成17年11月分診療報酬明細書(○○○○○○病院呼吸器科)
  • (7)平成17年11月分診療報酬明細書(○○○○○○病院眼科)
  • (8)平成17年11月分診療報酬明細書(○○○○病院)

5 審査会の判断

(1)本件処分について

実施機関が、生活保護台帳のうち関係機関の個人名及び個人の印影、電話番号及び銀行口座を、条例第17条第3号及び第4号の規定に基づき申立人以外の個人及び法人の情報であるとして開示しなかったことは妥当である。

(2)3(1)アについて

実施機関は、3(1)アを保有していないと軽信し本件処分を行ったが、本件異議申立てがなされた後、3(1)アを保有していることを確認したとして、平成21年7月23日付けで個人の印影を除く部分の開示決定を行っている。
申立人が本件異議申立てにおいて開示を求めている3(1)アについては、既に開示決定が行われている以上、この決定により、申立人の3(1)アの開示を求める異議申立ての利益は消滅したと認められる。
よって、本件異議申立てのうち、3(1)アの開示を求める部分については、却下すべきである。

(3)3(1)イについて

ア 当審査会が調査審議したところ、次の事実が認められた。
預金通帳の写しは、生活保護台帳に編綴されたA4判3枚からなり、○○○○銀行○○支店の普通預金の預金通帳と○○○○○銀行○○支店の普通預金の預金通帳とを並べた形で、複写機によって複写されたものである。前者の通帳
として平成10年10月8日から平成17年1月13日まで、後者の通帳として平成16年5月28日から平成17年8月8日までの入出金履歴が記載されている。
実施機関は、法第29条の規定に基づき、平成17年10月12日付けで、申立人から保護申請がなされた同月7日現在の申立人との取引の有無及び預貯金等の種類について、○○○○銀行○○支店長及び○○○○○銀行○○支店長
を含む9者に対し照会したが、○○○○銀行○○支店長からの平成17年10月18日付け回答書には、預金の最終入出金履歴記入日が平成17年1月13日である旨が、○○○○○銀行○○支店長からの平成17年10月25日付け
回答書には、預金の最終入出金履歴記入日が平成17年8月8日である旨がそれぞれ記載されている。

イ 以上の事実からすれば、実施機関が申立人から預金通帳の写しの提供を受けた時点においては、○○○○銀行○○支店の普通預金の預金通帳の原本には平成17年1月13日までの入出金履歴しか、○○○○○銀行○○支店の普通預
金の預金通帳の原本には平成17年8月8日までの入出金履歴しかそれぞれ印字されていないものと認められる。このため、上記時点においては、○○○○銀行○○支店の普通預金の預金通帳にあっては平成17年1月14日以降の、○○○○○銀行○○支店の普通預金の預金通帳にあっては平成17年8月9日以降の各入出金履歴の写しを作成することはそもそも不可能なのであって、4枚目の預金通帳の写しが存在することはあり得ない。したがって、4枚目の預
金通帳の写しは実施機関が保有していないものと認められる。
よって、実施機関が3(1)イを保有していないとして開示しなかったことは、妥当である。

(4)3(1)ウについて

実施機関は、3(1)ウを保有していないと軽信し本件処分を行ったが、当審査会の意見聴取後、3(1)ウを含む本件開示請求の対象である保有個人情報を保有していることを確認したとして、平成21年7月23日付けで開示決定を行っている。
申立人が本件異議申立てにおいて開示を求めている3(1)ウについては、既に開示決定が行われている以上、この決定により、申立人の3(1)ウの開示を求める異議申立ての利益は消滅したと認められる。
よって、本件異議申立てのうち、3(1)ウの開示を求める部分については、却下すべきである。

以上のことから、「1審査会の結論」のとおり判断する。

なお、実施機関は、本件異議申立てがなされた後や当審査会の意見聴取後に本件開示請求の対象である保有個人情報の保有を確認するなど、保有個人情報の管理が不適切であったと認められる。そのため、本件開示請求の対象である保有個人情報の特定が不十分となり、改めて開示決定を行うことになったものである。
実施機関は、保有個人情報の適切な管理に努めるよう留意されたい。

(答申に関与した委員の氏名)

奥真美、徳本広孝、横山豪

審議の経過

年月日

内容

平成20年12月2日

諮問を受ける(諮問第25号)

平成21年1月8日

実施機関から理由説明書を受理

平成21年1月21日

審議

平成21年2月18日

申立人から意見書を受理

平成21年2月18日

実施機関からの意見聴取及び審議

平成21年3月17日

審議

平成21年4月24日

申立人による意見陳述及び審議

平成21年5月22日

審議

平成21年6月17日

実施機関から補充理由説明書を受理

平成21年6月25日

審議

平成21年7月27日

実施機関から補充理由説明書を受理

平成21年7月27日

審議

平成21年8月20日

審議

平成21年8月24日

申立人から意見書を受理

平成21年9月15日

審議

平成21年9月28日

答申(答申第20号)

お問い合わせ

総務部 文書課 情報公開・個人情報保護担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 埼玉県衛生会館1階

ファックス:048-830-4721

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