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掲載日:2023年5月17日

平成27年12月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(木下高志議員)

平成27年度埼玉県5か年計画の政策評価について 

Q 木下高志議員(自民

本県の政策は、分野ごとに基本目標を定め、施策の進捗状況と実績は、地方創生にも活躍されておりますKPI、日本語に訳すと重要業績評価指標により、それぞれの項目が可視化されております。
今回、平成27年度の埼玉県5か年計画の政策評価が発表されました。5か年計画は議会でも議決しているので、あえて自戒の意味も含めて質問をさせていただきますが、それによりますと、88パーセントの項目において「目標値を上回る」か「改善された」の好評価が出ております。しかし、さきの県民生活の満足度の51点と比べ、政策評価の88点は実感が湧きません。
そこで、このような結果が出てしまうのは、目標に対する重要業績評価指標であるKPIとのひも付けに課題があるのではないかと私は考えました。例えば井戸を掘るという事業があったとすると、事業進度は水源まで何メートル掘り進んだかという深さが指標になるべきですが、穴を掘るのに使用したスコップの本数を数えているようでは実態がつかめません。つまり埼玉県の施策であるならば、大多数の県民が困っている事象を課題と捉え、その課題解決に至る理論的なプロセスを重要業績評価指標(KPI)として設定すべきではないでしょうか。
さらに、指標を評価する考え方にも違和感を覚えます。ここに指標の最新値一覧がありますので、パネルを御覧ください。
ほとんどの数値改善状況が上向きの矢印です。見づらいと思いましたので拡大してあるんですが、ほとんど上向きになっているという、88パーセントが上向きになっているという、こういう評価が出ております。この数値改善状況の定義ですが、「目標値を上回る」が上矢印、「策定時より改善」されたものが斜め上矢印、「策定時から横ばい」は横矢印、「策定時より悪化」は斜め下矢印となっております。ここで問題なのは、指標の成果を評価基準日との比較により定めている点です。グラフのトレンドがどのような曲線を描こうと、調査日のデータより数値が上がっていれば改善となります。
民間は、このような評価指標はとりません。まず、前年比で仕事を評価します。仮に中長期計画との比較で目標を大幅に上回っている数値が出た場合には、更に高い目標値が設定されます。例えば、会社の業績が今年は最高益を出したとしても、喜んでいられるのは今年度のみで、来年は更に高い目標が設定され、その目標に向かって行動します。その考え方は、明らかに埼玉県とは違います。
また、更に注目したいのは、累計グラフが多い点です。調査開始日からの比較資料ですので、職員が仕事をしている限り、ほとんどのデータが上積みされ、指標では上向きの改善評価になります。仮にその累計値のグラフが、民間と同じように仕事のスピードや進捗を加味し、目標線との相違などを評価に組み込むならば理解はできますが、それも見当たりません。これでよいのでしょうか。
それでは、具体的な事例で御説明いたします。
例えば今回の政策評価では、「埼玉の成長を生み出す農林業を振興する」という政策目標の具体的施策として、「収益力ある農業の確立」があります。内容は、(1)農業法人をはじめ地域農業の多様な担い手の経営発展を支援、(2)優良農地の確保と農業生産基盤の整備や環境に配慮した農産物産地の支援、(3)地産地消、農業の6次化、農商工連携等の仕組みづくりの推進です。
以上の施策に対し、施策の進捗を表す重要業績評価指標(KPI)には、県内の農業法人数、輸出品目数が示されました。本当にこの2つの指標に基づいて施策を進めていけば、収益力のある農業が埼玉県で確立できるのでしょうか。これです。「収益力ある農業の確立」、これに向かって農業法人数と輸出品目数を数えているという、こういうことであります。
一般的に考えて、収益力ある農業を確立させるのが目的ならば、基礎となる重要業績評価指標(KPI)は、県内の農業産出額や生産農業所得の推移ではないでしょうか。テーマが収益ですので、少なくともグラフの尺度は金額になるべきではないでしょうか。農業の成果を金額で表すことは、市況や為替の変動で政策効果を生むのに困難さがあるとしても、それを踏まえての埼玉農業の確立に切り込むべきではないでしょうか。私には、さきの例えで申し上げたとおり、井戸を掘る事業なのに、成果を表すのにスコップの本数を数えているように思えてなりません。
さて、それはさておき、現在この2つの指標とも好傾向を示しているので、「収益力ある農業の確立」という施策は「改善」と評価されました。これを県内の農業従事者が聞いたらどう思うでしょうか。実際の農業の苦しみを共有してほしいと感じるのではないでしょうか。県内の農業従事者は、埼玉県は輸出品目数の増加に注力するのも結構だが、赤字農業の課題の本丸に切り込んでほしいと感じるのではないでしょうか。いかがでしょうか、皆さん。
同様の事例として、「子どもを鍛え次代を担う人材を育成する」という基本目標があります。その施策として「特別支援教育の推進」では、施策の重要業績評価指標(KPI)に「特別支援学校高等部で一般就労を希望する生徒のうち、実現した割合」を選定いたしました。これです。この表を見てわかるように、平成24年度をピークに年々減少に転じ、ついに昨年は、計画策定時と比べて微増となり、傾向的には悪化している状況です。それが、埼玉県の政策評価には「改善」と良い評価になります。これが76.2でピークでありますが、2年下がってきているというトレンドにあるのに、「改善」という評価になる。全く不思議です。
同様の事例として、「暮らしの安心・安全を確保する」という基本目標に対して、施策として「住まいの安心・安全の確保」があります。この重要業績評価指標(KPI)には「子育てを支援する住宅の認定戸数」が選定されました。これです。グラフからすると順調な進捗を示しておりますが、そもそも初年度の認定戸数の923─この数字です─は、何とマンション1棟でありました。そして、24年度はマンション3棟、25年度は4棟、26年度は7棟です。戸建て分譲住宅団地はどうかと調べましたら、23年はゼロ件、24年は5件、25年は10件、26年は何と減少に転じ3件のみでした。グラフから見ると実直に積み上げられているように感じますが、大半は認定マンション15件のグラフとなっております。
以上、例示で申し上げましたが、その他にもたくさんあります。しかし、これらのグラフは間違っているわけではありませんし─ここが重要なんです─調査していても、職員が怠けようとしているという印象は全く感じられませんでした。むしろ頑張っておりました。
では、理由はなぜかと申しますと、職員の大多数は仕事は一所懸命行っているけれど、自分の仕事で上司や同僚が叱責されるようなことだけは避けたいという気持ちが、このような指標に表れるのであります。事実、私が企業にいたときも同じ思いで資料を作成しておりました。5か年計画の指標について、いろいろと意見、指摘をさせていただきましたが、知事は指標の設定についてどのようにお考えなのか、お伺いをいたします。 

A 上田清司 知事

「農業法人数」や「輸出品目数」の指標だけで、収益力ある農業の確立が「改善」と評価されることへの疑問をいただきました。
御指摘のとおりです。
ある一つの指標で物事の全体を表わすのは自ずと限界がございます。
より良い指標がないか常に研究して、改善を図っていかなければならないとのご指摘であったと思います。
また、議員からは5か年計画策定時と最新の数値のみ比較して、その途中で下がっていても「改善」していると示すのは問題があるとの御指摘もいただきました。
私も問題があると思います。
「改善」という場合でも最小限度の注釈が必要と思います。
さらに、累計の数値が指標となっているものは、通常は毎年数値が積み上がるものなので、この数値が上がったからといって単純に「改善」したと表示するのもどうかと御指摘がございました。
これについては、全く私も同感です。
私は職員に単年度の比較だけではなく、長いトレンドを見る「魚の目」で、あるいは、他県との比較や市町村別の比較などの「鳥の目」で、ものごとを見る努力をするように指導しているつもりでございます。
御指摘を踏まえて、今後は、県民の皆様に本質的な解決が見えるような公表の仕方というものを考えていきます。

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。

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議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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